先生は神様みたいに優しい人でした。(望霧)
  



・3XX話のネタバレ、捏造
・個人解釈盛り沢山
・鬱寄り。

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先生は優しい人でした。けれどその優しさはとても残酷なもので、優しすぎる余に私が報われる事は永久に無いのです。先生は昔とある少女を亡くしてしまったそうです。それは事故でした。けれど彼は己の所為で亡くなったと言って聞かないのです。その優しさが彼を、そして私達を苦しめている事は彼は知る由もありません。自分が殺してしまったと言うある意味の幻想に彼は哀しみ、苦しんで最後には愛を捧げて、彼は彼女の為に生きる事を選んだのです。

「先生、また来たの。」

雨が屋根を激しく叩く音が響いて暗闇の中で眠れぬ夜を過ごしていると襖が静かに開き、顔を覗かせる彼は少し哀しみの表情を笑顔に滲ませたまま言った。

「先生も一緒に眠って良いですか。」

先生は夜、時々こうして私の元へ来て一緒に眠る事がある。上半身を起こしながら私は小さく頷くと隣に枕を並べ、私を静かに抱き締めながら布団に横たわると私の肺に当たる部分に静かに手を置いて瞳を閉じた。先生はいつもこうして少女の面影を追って夢へと堕ちる。私の中のカフカと言う核を追って、愛を捧げるのだ。其れはある日は血液であり、心臓であり、子宮であり、角膜であるらしい。


「死にたい。」

其れは趣に出た言葉だった。故意にこの言葉を放った訳ではなく、何時の間にか私の口から出た言葉であった為消え入る様な私の声は先生に届いているかさえ解らない。虚空に滲み、消えて行った言葉は少なくとも私の意志では無かった。先生は閉じた瞳を見開き驚いた様に私を見ると不健康な程に白い指先を私の頬に滑らせて少し哀しそうに微笑った。

「先生もです。」


(先生は神様みたいに優しい人でした。)







2012/09/02 14:21

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