俺を選ぶんだよ、絶対に



翌日、言われた通り砂浜に来た私。
何があるのかと思いきや、ただサッカー部が練習しているだけだった。

そういえば、今までまともに荒木がサッカーしてるとこ見たことないかも。そんなことを考えながら、初めて荒木のプレーをじっくり見てみる。


サッカーの事はよく分からないけれど、ボールを蹴る姿が凄く楽しそうで、あんな風に何かに夢中になってる姿がカッコイイものだなんて知らなかった。


「お、来たな」


休憩中に私に気付いた荒木がこちらにやってくる。


『あ、あのね、荒木…』

「あー?」

『昨日はごめんね…』

「は?」


キョトンとする荒木に、私は昨日のお菓子がまずかった事を説明してからもう一度謝った。


「んだよ、そんなことか」

『あんなにまずいと思わなかったから…』

「気にしてねーよ」

『でも…』


申し訳ない気持ちでいっぱいの私に、荒木はしばらく間を置いてから喋り出す。


「つか、別に正直味とかどーでもいーんだよ。お前が俺のために作ったっつーのが大事」

『えっ…』


荒木の思わぬ発言に、ほんの少し胸が音を立てた。


「まっ、このまま練習見てけよ。俺様のスーパープレーたっぷり見せてやっからよ!」


ニカッと笑ってそう言う荒木。


『もしかして、昨日言ってたお礼ってそれ?』

「んだよ、不満なのかよ」

『いや、別に…元々お礼されるような立場じゃないし』

「だからー、気にしてねーって。むしろ俺が嬉しいと思ってたんだよ。気付けバーカ!」

『ば、馬鹿って何よ!別にあんたじゃなくてもいいんだから!』


思わず口をついて出た言葉に、一瞬荒木が怯む。


「へっ!言ってろ!どーせお前は俺を選ぶしかねーんだよ」

『な、何よそれ!私にだって…!』


反論しようと口を開いた時、腕を掴まれ力強く引き寄せられた。


『!?』

「お前は俺を選ぶんだよ、絶対に」


そう告げて腕を離した荒木は、背を向けて練習に戻って行った。


『何よ…何するのよ…』


全身の熱が上がって、心臓がうるさく脳に鳴り響く。

もう、後戻りは出来なかった。




自信家な彼のセリフ
(俺を選ぶんだよ、絶対に)






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