俺を惚れさせてみろよ



「よー、独り身」

『………』

「シカトかよ」


二度と見たくないやつが目の前にいる。昨日に引き続き、今日もまたこいつは私の所にやってきた。

誰が口なんて聞くもんか、そう思って無視を続ける。


「おい、」

『………』

「名前」

『………』


いきなり名前で呼ばれて少し動揺する。

無視無視。


「まあ、お前に彼氏なんて出来そうもねーもんな?」

『なんですって!?あ…』

「へっ、口ついてんじゃねーか」


しまった、喋ってしまった。
今のはこいつが酷いこと言うからいけないんだ。


『で、出来るわよ彼氏くらい…』

「ほー?」


悔しさのあまりに、思わずそんな事を言ってしまう。
確証なんてどこにもない。ましてや、過去に彼氏と呼べるような恋人が出来た事すらない。


「ホントに出来んのかよ?」

『出来るわよ!』

「モテねーのに?」

『そ…!そんなの…簡単…だもん…』

「ふーん」

『な、何よ…』


疑わしげにこちらを見つめる荒木に少し身を引いてしまう。


「じゃあ、まず手始めに惚れさせてみろよ。この俺を」

『は…はあ!?』


いきなり無理難題である。
どう考えても、今目の前にいるこいつを惚れさせるなんて無理、いや無謀な挑戦だ。


「あー楽しみ、じゃあな」


そう言って荒木は去って行った。

どうしよう。
だけど、このまま何もしないでいるのは、ただ敗北と認めるだけ。それはもっと嫌だ。


『や、やってやろうじゃない…』


何としても、あいつに勝つ。




自信家な彼のセリフ
(俺を惚れさせてみろよ)






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