お前、彼氏いねーだろ?



「お前さ、彼氏いねーだろ?」


教室の真ん中。休み時間に突然私の所にやってきた学校の有名人、荒木竜一が放った一言。


『はあ!?』

「図星か?」


ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべて前の席の椅子に逆向きに座る荒木。
乙女に対して失礼程極まりない。


『普通乙女にそういうこと聞く!?』

「乙女?どこにいんだよ」


何こいつ。すっごく腹立つ。
ここで怒鳴ってしまえばそれこそこいつの思うツボ。
ここは乙女らしく、大 人 に、そう思って無理矢理笑顔を作る。


『いるでしょう?ここに』


そう言うと荒木はまじまじとこちらを見つめる。


「いや、ちょっと俺には見えねーわ」


かっちーん。


『テメェちょっと表に出ろ』

「出やがったな本性!」


周りからクスクス笑いが聞こえ始めた。
本当にこいつのせいで、良い晒しものである。


『あんたが最低な事ばっかり言うからでしょ!?』

「あー?俺は事実しか言ってねーよ」

『それが最低だって言ってるの!ホントに失礼!頭使え馬鹿!』

「んだと?もっと言ってやろうか?さっきの作り笑い全然可愛くねーから」

『なんですって!?』


もう怒りは沸点を越えている。
なんなのこいつ!

その時、学校中にチャイムが鳴り響き、目の前にいた荒木が立ち上がった。


「じゃあまたなー」

『もう二度と来んな!馬鹿!だいっきらい!!』

「おーおー、言ってろ言ってろ」


私は余裕たっぷりに去っていく背中に全力で怒鳴り付けた。




自信家な彼のセリフ
(お前、彼氏いねーだろ?)






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