「好きだ」



それは、何より強力な魔法の言葉。

恋をすると、女の子は綺麗になる。
それは、ただ見た目を表すわけではない。
恋をしているときの豊かな表情だったり、好きな人の為に可愛くなろうと努力をしたり…。
その姿はまるで蛹から蝶になるような、魅力的なベールに包まれている。

だけど、その変化に気付く男の子は少ない。

ねえ、気付いて。
私に魔法をかけられるのはあなただけということに──…


いつもと違う自分。
あなたの為にしたおめかし。

淡い期待を胸に、あなたの前に立つ。


『あ、あのね、荒木くん』

「んだよ、急に呼び出して。もしかして告白か?」


俺に告白?なあなあ、と雰囲気をぶち壊し私に詰め寄る彼。
私は意を決して口を開いた。


『そ、そうだよ!好きなの!悪い!?』


半分泣きそうになりながら、怒鳴るようにそう答えると、あなたは心底驚いたような顔をしている。


「え…、え?マジで?」


コクンと頷くと徐々に染まり始めた彼の顔。


『えっ…』

「いや、その…」

『?』

「俺も…」


淡い期待がざわざわとうずく。
それが信じられなくて、ただの自意識過剰だったらどうしようと、私は彼にはっきりとした回答を迫る。


『それって…』

「だから…その、俺もお前が」

『……』

「好きだ」



魔法が溶ける頃、そこにいるのは灰被りの少女ではなく…




好きだ
(恋する乙女の無敵の笑顔)






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