「泣くなよ」
いつもの日常だった。 いつも通り学校へ行き、バイトに行き、そして帰宅する。 規則めいた行動を今日も繰り返していた。
彼が行ってしまってから、寂しい気持ちはあるものの、毎日のように活躍をテレビで見ることが出来たし、何より日課になった夜の電話のおかげで、離れていても彼への気持ちは変わることはなかった。
帰宅してしばらく。 電話の時間まではまだ数時間程あるといった頃、家の中にチャイムが鳴り響いた。
『はーい』
お客様を待たせてはいけないと、玄関まで走っていき、チェーンを引っ掛けつつのぞき穴を見る。
『!』
私はチェーンを外して勢い良くドアを開けた。
『竜一…!』
「うおっ!」
その姿を見て我慢ができず思わず飛び付いた私の勢いに圧されて、バランスを崩しかける彼。
不用心にドアを開けた私に対してぶつぶつ言う彼をひとまず部屋に招き入れ、部屋に入った所で私は彼に抱きついた。
『おかえり』
「おう、ただいま」
そっと抱きしめ返してくれた彼の温もりに目頭が熱くなる。
「待たせちまったけど…迎えにきた」
『……うん』
耳元で低く囁かれ、改めて彼がすぐ側にいることを痛感する。
「…泣くなよ」
『いいの、これは嬉し涙だから』
そっと頬に手が添えられ、私の涙を優しく拭った。
泣くなよ (結婚しよう)
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