第一章:出会い
きっかけは、




当時5歳の私は、玄関までパタパタと足音をさせて、靴を履いている父の背中に飛び付いた。その後を追ってきた母が口を開く。


「名前またパパに着いて行くの?」

『うん!あのね、すごいせんしゅがいるの』

「名前のお気に入りなんだよな?」

『うん!すごくかっこいいんだよ!』


自分の背中に飛び付く娘の頭を撫でる父。父は元プロサッカー選手で、怪我で引退して以降、今はトレーニングスタッフとして活動していた。
私は父の背中から離れ、外出の準備をする。


「へー、そんなに凄いの?」

「ああ、今のチームでは1番若いがカリスマ性があって今の世代ではもう中心人物と言ってもいいくらいなんだ」

「ふーん、何て名前なの?」

「岩城鉄平くんだよ」


両親が会話している横で靴を履き終えた私は父の腕を引っ張った。


『パパ、行こうよー』

「ああ、そうだな。行ってくるよ」

「行ってらっしゃい」


背伸びをしてドアノブに触り、玄関の扉を開ける。


『行ってきまーす!』


元気よくそう返事をして、私は父に手を引かれながら、仕事場である練習場へと向かった。





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