練習後、それは私にとってようやくやってきた“おてつだいのじかん”だった。

スタンドから階段を下りてグラウンドに行き、散らばったボールを専用の籠に一つずつ直していく。


「名前ちゃん」


ボールを一つ籠に入れた所で彼がやってきた。


「僕も手伝いますね」

『ひとりでできるよ?』

「知っていますよ、名前ちゃんは偉いですから。これは僕の自己満足です」


そう言ってにっこり笑う彼を拒否する理由は私には無く、私も彼と一緒に“おかたづけ”出来る事を素直に喜んだ。

そうして、いくつか籠にボールを片付けた時だった。


「鉄平ー!これ片付けといてー、あっやべ…!」

「名前ちゃん!」


自主練をしていた一人の選手がボールを彼に蹴って渡そうとした際に足元を狂わせ、そのボールは勢いよく私がいる籠の方へと飛んできた。

バァンと大きな音を立て籠に激突したボール。その衝撃で、ボールを入れるためにぶら下がるようにして体重を掛けていた私の方へと、籠が倒れてきた。


『!』

「危ない!」


ぎゅっと目を閉じて、ぺちゃりと尻餅をつき身体に力を入れた私を、ふわりと温かいものが包み込んだ。


「大丈夫ですか?」


恐る恐る目を開けると、目の前には彼がいて籠を支えてくれており、私は怪我一つしていなかった。


「おい、大丈夫か!」


騒ぎを聞き付けこちらに走ってくる父。


「はい、大丈夫です」

「そうか…、よかった…。名前、ママに迎えに来てもらうから、今日はもう帰りなさい」


震えてしまって声が出せなかった私は、代わりにコクコクと頷いた。





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