U-18日本代表の練習場に着いてすぐ、私はスパイクの紐を結ぶ一人の選手を見付けて駆け出した。
そんな私の足音に気付いたのか、こちらを向いて笑顔を向けるその人。
「やあ、名前ちゃん。今日も来たんですね!」
『えへへ…』
近くまで行くと、しゃがみ込んでいる彼と私の身長は同じくらいで、よしよしと頭を撫でられる。
『きょうもおてつだいするんだよ!』
「偉いですねー!じゃあご褒美にこれを上げますね」
そう言ってポケットに手を入れた彼は中から一つの飴を取り出した。 今思うと、この人は私の為にいつでもポケットに何かを入れていたのかもしれない。
「はい、どうぞ」
『ありがとう!』
掌をコロンと転がる飴を、私は大事に握りしめた。
「あーあ、すっかり仲良しになってしまって…」
頭上から降ってきた声に顔を上げると、どうしようもないな、という笑顔でこちらを見つめる父がいた。
「苗字コーチ」
「岩城くん、いつもすまないね」
「いえ、可愛らしい妹が出来たみたいで僕も嬉しいので」
にこにことした笑顔でそう言う彼。ぱちっと目が合ったので、私が彼に抱き着くと、頭を撫でてくれた。
「ほら名前、そろそろ練習が始まるからスタンドに行ってなさい」
『はーい』
「また後でね、名前ちゃん」
『うん!』
立ち上がった彼と父親に手を振り、私は大人しくスタンドへと向かった。
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