*飛鳥享



少し歩くだけで、頭にガンガンと振動が響き渡り、しゃがみ込んでしまう。
せっかくの休日だというのに、風邪を引いてしまったのだ。

私の両親は共働きで、いつも家にいない。それは学生の休日である土日でも変わらなかった。
そんな中風邪を引くというのは、夜遅くまで一人でいなければいけない私からすれば、とても酷なものだった。


『つらすぎる…』


お水が飲みたくてリビングに行こうとしても、ふらつく足元ではまともに真っ直ぐ歩けず中々辿り着かない。

寝ようにも頭痛が酷くて中々眠れず、先程まで彼氏にメールしてそのことで散々愚痴をこぼしていた。


なんとかリビングの前まで来た時、突然家のインターホンが鳴った。


『こんな時に…』


お客にしても宅配便にしても、風邪を移してしまったら申し訳が立たないので、私はその場で物音を立てないようにして居留守を使う事にした。


『(しまった…座ればよかった…)』


立ったまま固まっている今、覚束ない身体で、このまま立っている自信も、物音を立てずに座れる自信も無かった。

このまま倒れてしまうくらいなら、きっと座った方がマシだ。

そう思い、出来るだけゆっくりとその場にしゃがみ込んだ。





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