*荒木竜一



突然サッカーボールが蹴りたくなって、昼休みにグラウンドで適当にボールを弄んだ後、ぶらぶらと校内にある木陰を歩いていると、そのうちの一つのベンチであいつが気持ち良さそうに座っていた。

少し近付いてみると、どうやら居眠りをしているらしく、更に近付いてみても、あいつは俺の存在に気付いてないのか起きようとしない。


「おい、こんなとこで寝てっと襲われても知んねーぞ?」


主に俺に。
そう口にはせず、少し身体を揺すってみても、相変わらず。名前はすやすや気持ち良さそうに寝息を立てている。


「ったく…」


俺が少し触れた事で、保たれていたバランスが少し崩れ、カクンカクンと揺れ始めるこいつを見ているのは実に楽しかった。


「………」


こっそり、気付かれないように隣に座り、少しずつ距離を縮めてみる。

すると、コテンと俺の肩に頭を預けてきた。


「っ…、何やってんだよ俺…」


自分で行動しておきながら、恥ずかしくなり顔が熱くなる。誰も見ていないとは知っていても、思わずニヤケそうになる口を手で覆う。


『!』


ようやく目覚めた名前が、隣にいる俺を見て目を見開いた。


『えっえっ、荒木くん?えっ…』


状況をよく理解していないせいで、動揺する名前。


「お前さ、大胆だよなー」


ニヤケを止められずもはや隠し通す事は出来なかったので、それを逆手に、悪戯っぽい笑いに変えてそう言うと、どんどん赤くなる名前の顔。


『えっ嘘っ!?ごめ…!』

「そんなに俺が好きなのかよー?」


好きなのは俺だ。そんな事分かってるけど、ノリと勢いで冗談混じりに言ってみる。


『っ…!』


そうしたら、名前は更に真っ赤になった。予想外の反応。

え、嘘だろ?

二人して真っ赤になって固まる光景は、何とも言えない恥ずかしさで、だけどとても嬉しいものだった。




戯心≒恋心
(惚れさせたお前が悪い)






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