*荒木竜一



初デート。
まだ付き合いたての私たち。

そんな私たちを少しの緊張感と気まずさが取り巻いていた。


『(ちょっと気まずいよ…どうしよう…何か会話…)』


そんな空気をなんとかしようと頑張って話題を探すものの、思い浮かぶのは自分の好きな物事の話題ばかり。


『(荒木くんはサッカーが好きだから…何か…サッカーの話題…)』


そう思っても普段の私はサッカーなんて滅多に見ないし、見たとしてもそれこそ荒木くんが出てる試合くらいで…


『あ、荒木くんはさ、好きなサッカー選手とかいるの?』

「好きな選手?選手かー…あんまし考えた事ねーな…」


終わった。

特に次に繋げられる事も出来ずに会話はそこで終了してしまった。


『(どうしよう…)』


目的地に着いた電車から降りながら、どうやって次の話題を切り出そうか必死に思考を巡らせ、無意識に足早になっていた私の腕が突然掴まれる。


『!?』


私は思わず、反射的にバッと手を引いてしまった。


「あ…しくった…」

『?』


少し後ろで悔しそうな、恥ずかしそうな顔をする荒木くん。


「な、なんだよ」

『今、何を…?』

「べっ!別になんでもねーよ!!」


顔を真っ赤にして怒鳴る彼はそのまますたすたと歩き出した。


『(もしかして…手を繋ごうとしてくれた…?)』


そう思うとついつい頬が緩む。
どうしたものか、一度にやけると止まらない。


「何笑ってんだよ…」

『何でもない!』

「ほら、行くぞ」


そう言って、今度は前から私の手を取る荒木くん。


『うん』


気まずさなんてものは既にここにあらず。私は彼の手をしっかり握り返した。




ttempt
(in an attempt to walk
hand in hand)






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