*荒木竜一



別に浮気現場を目撃したとか、そういうわけじゃない。
ただ俺が嫉妬深いだけ。

名前が他の男と喋ってるのを見ただけでイライラして、俺はこんなに…、とか考えてしまう。


『竜一どうしたの…?』


キョトンとする名前を無理矢理椅子に座らせて両腕を縛り、目隠しをした。


『えっ、ちょっ…!』


俺だけのものになればいい。


「なあ、怖いか…?」

『え…そりゃ怖いよ、だって何も見えないんだもん…』

「このままお前のこと放ってったら、どうするよ…?」

『えっ、やだよ竜一!置いてかないで!』


状況を理解した名前の顔色が変化して、怯え始めた。


『ここにいてよ、竜一…』


もっとだ、


『竜一…?』


もっと。


『えっ、嘘っ、ホントに?ホントに置いてかれたの…?』


だんだんと、名前の声色が恐怖で震えていく。


『竜一っ、竜一どこっ…?』


もっと俺を求めればいい。


『竜一!!』


目を隠しているのではっきりとは分からないが、きっと名前は泣いている。


「んな大声出さなくても、ちゃんといるぜ…?」


それを確信してそっと耳元で囁くと、名前の身体が驚きでビクッと跳ねる。


『りゅ…』


俺の名前もはっきり呼べずに、上擦りながら震える声。目を覆う布がじんわりと濡れ始めた。


『竜一…どこ…』

「ここにいるぜ?」


頬にそっと触れると、名前は一瞬跳ねて、そして安堵の表情を見せた。

それを見て、すぐに手を離すと、名前の身体が再び強張り、物足りないという顔になる。


『竜一…』

「ほら、ちゃんと言えよ。どうして欲しいのか」

『さ、触ってて…』

「聞こえねえ」

『触って下さい…』

「へっ、よく出来ました」


最高に愛でてやるよ。
そして、俺しか見えなくなればいい。





(愛してる)






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