*荒木竜一



幼なじみとは不思議なものだ。


『竜くんまた太ってる』

「うるへー」


休み時間、隣の席に座りにきたその人を見遣り声を掛ける。
彼にとって突っ込まれたくない事を突っ込んでしまったのだろう。どうやら拗ねてしまったようで、機嫌悪そうにむすっとした顔をしている。

昔から、痩せては太る竜くん。
小さい頃からお互いを知っているからか、彼の変化には見慣れてしまった。


『痩せてたらイケメンなのにね』


ふくよかなお腹をぷにぷにと引っ張りながら、短時間で大きく成長した脂肪をじーっと見つめる。


『子供生まれてきそう』

「生まれねーよ!!」


俺は男だ。と盛大に突っ込まれた。

そのせいでか周りにいた生徒がクスクスと笑い始めた。


『ウケとしては最高だよね、そのお腹』

「………」


あ、また拗ねた。


「お前はさ、太ってる俺と痩せてる俺とどっちがいいんだよ?」

『どうしたのさ、いきなり』

「いいから答えろ」


先程とは打って変わって、突然真剣な顔でそんな事を言い出した竜くん。


『どっちがいいか聞かれても…、どっちも竜くんだし。どっちでもいいんじゃない?』


世間的な評価と、サッカーが大好きな彼にとって、運動をするなら痩せている方が断然いいに決まっている。けれど、小さい頃から丸かった彼が痩せると、別人のように思えてしまう寂しさも無きにしもあらずなわけで…。


『竜くんは竜くんだよ』


見た目はどうであれ、好きな事に一生懸命な彼がいい。
変わらないで欲しい気持ちと、そのどちらの姿であっても、小さい頃からの夢を追いかけ続けて欲しい気持ちとで出た答えだった。

彼には夢を叶えて欲しい。


「そーかよ…」


私の答えを聞いて、彼はそれだけ言って立ち上がり、教室を後にした。




「ほんとあなたたちって素直じゃないよね」

『え?』


彼が去ってから私の元にやってきた友人が突然そんなことを言い出した。


『何が?』

「何でもなーい。あ、でも一つ良いこと教えてあげる」


そう言って、訳が分からないといった表情を向ける私に、友人はニヤニヤと笑いながら小さく耳打ちしてくる。


「さっきの荒木くん、耳まで真っ赤だったよ」

『えっ…』

「よかったね」


ニッコリと笑顔を向ける友人の言葉に、何故か私の顔が熱を帯びはじめる。


『べっ…別に私は…!』

「あー、名前真っ赤ー!」

『ちちち違う…!』




自覚
(痩せたらU-15に呼ばれた…!)
(えっ!おめでとう…!!)






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