夢は夢。そう心に釘を打ち、私はいつも通りに学校へと来ていた。


『はあ…』


あんな夢の後という事で余計変に彼を意識してしまう。授業中も、休み時間も、チラチラと彼を気にして見てしまっていた。


『これじゃあなんか彼が好きみたいじゃない…』


彼は今、休み時間ということでサッカー部の仲間たちとワイワイはしゃいでいる。

私は出来るだけ彼を見ないようにしようと思い、彼らと反対側の窓の外を見つめた。意識しないように、意識しないように…。そう脳内でぶつぶつと呟きながら。

その時、ガタンと隣で大きな音がしてそちらを振り向くと、一瞬で視界が暗くなり、身体に痛みが走る。


『!?』

「あ、わり…」


目の前にいたのは荒木くんだった。

遊んでいた時に隣の机に足を引っ掛けて躓いたらしく、その拍子にこちらに倒れてきた際にそこに私がいたことで上手く体制を整えられずにそのまま私ごと倒れてしまったようだった。

さっきの痛みはその時についた尻餅のせい。


「あー!荒木が苗字さん押し倒したー!」

「ち、ちげーよ!!」


少し顔を赤くして反論する彼だったが、私はそれどころではなかった。


「ほんっと、悪かったな!大丈夫か?」


くるりと振り向き私を立ち上がらせてくれる荒木くん。


『う、うん…』

「ならよかったぜ」


どうしてくれるんだ。




恋にちる
(それはとっても呆気ない瞬間だった)





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