ふと気が付くと、私はリビングのソファで眠っていた。


『…あ、あれ…?』


自分でここまで来た記憶はない。
必死に思い起こすも、私の記憶はリビングの扉の前でしゃがみ込んだ所で終わってしまっている。


「気が付いた?」


聞き慣れた声にゆっくりと身体を起こす。
すると、隣に先程まで愚痴をこぼしていた彼氏が、雑誌を片手にソファにもたれて座っていた。


『享…!』

「まだ横になっていた方がいい」


そう言われてもう一度ソファに寝かされる。


「勝手に上がってしまってすまない」


彼の話によると、何度もインターホンを鳴らしたが無音だった為、心配でドアに触れたら鍵が掛かっておらず、そのまま開けたら、私がリビングの前で倒れていたらしい。


「女性の部屋に勝手に入るのは失礼だと思ったからここへ連れてきたんだが…少しは眠れたか?」


優しくゆっくりと私の頭を撫でるその大きな手と、彼の優しい笑顔に、先程までのつらさと寂しさが込み上げてきて、思わず涙が溢れそうになる。


『享…』


なんとか涙を堪えて、目の前にいる彼に抱き着いた。


「…こんなに弱ってる名前を見るのは初めてだな」


少し驚いたように言う享だったが、面倒見の良い彼は嫌がる事もなくよしよしと頭を撫でて抱きしめてくれた。





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