小説 | ナノ

 

オマケ
 

 
「レーダの花言葉って知ってる?」


そう不意な質問を私に投げかけたのは、私よりも二回り近い歳上の旦那さまだった。
茶色い目、茶色い髪を持つ私の旦那さまは、本を書く仕事をしていて、私たちは今その本を書くための旅行をしている真っ最中なのだ。

色とりどりの花が咲き誇るこの花畑を見た時、旦那さまピタリと足を止めて、しばらくここで休もうかとその花達の中に腰を下ろした。
綺麗に咲く、この花達の名はレーダ。
私達夫婦を繋ぐものの一つだ。


「たしか、幸せ、だったと思うんだけど」


この花言葉にちなんで、花嫁はよくこの花々を婚礼の花束につかう。
私もその花嫁のひとりで、私と彼の婚礼の日は、私は桃色のレーダを一輪、髪に挿した。

彼は優しく微笑んでから、手に持っていたものを私の頭へと乗せた。
それは、様々な色がまじった七色の冠。
大きな花びらが私の頭を飾る。


「レーダの花言葉にはもう二つ、大事なものがあるんだよ。
一つは出会い」


レーダの花冠と一緒に、私の髪を撫で、その一房をとって口付ける。
すっと自然に行われる仕草は、どうみてもタラシにしか見えないのだけど彼はこれを素面でやっているのだからすごいと思うしかない。
純粋な彼の、そういう所が私は好き。


「……もうひとつは?」


続きを切り出さない彼に、せがむように言えば優しくその腕に抱きしめられた。
おおきなこの身体は、私を優しく包みこむ。
そして、



「待ち望んだ未来、だよ」





それは幸福を集め成した季節






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