小説 | ナノ

 

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二、幼い双子


「あの二人……どうするおつもりですか?」


ふたたび眠りについた二人を部屋に残し、俺とサントリナは書斎へと移った。書斎に入った直後、サントリナは俺にため息をついてそう言った。


「どうするって……お前と同じだ」


近くに積んである本の中から黒い革表紙のもの開き、文字を追いながら俺は思い出す。


「……そうですか」


一拍おいて、サントリナの返事が耳に入る。そう、こいつもあいつらと同じだった。

サントリナは俺がまだ十七だった頃に出会った。場所は裏市場。不法な人身売買が行われているその場を俺は演し、商品としてつれてこられた人々の中にこいつはいた。両の瞳の色が違い、大きな傷を体に背負ったサントリナは他の奴隷たちにも避けられ、一人牢の隈にいた。そして、身を震わせながらも堂々としているこいつに何かを惹かれ、俺のもとに来ないかと誘いかけたのだ。

あの二人もサントリナと同じで、新しい闇オークションで売られていた二人を俺は引き取った。異形の姿をしたあの二人は過去何度も何度も売られ、買われ続けたのだろう。光の失せた瞳がそれを意味していた。少年の右腕は少女の左腕と繋がっており、少女の左足は少年の右愛と繋がっている。珍しい、そして二つとない。それを求めるものは数知れない。


「傍に置く。そして、お前の下につけるよ」

「……全て私に投げるつもりですか?」

「そんなことは言ってない。ただお前にはあの二人を教育してほしいんだ」

「教育?」

「ああ、言葉から常識、そして教養、必要なものすべてを、だ。あいつらには今考えているあの組織の中枢になってもらいたい。そのための準備を。サントリナ、お前も手伝ってくれ」


闇で生さていけないように、光でも生きていけない人間はたくさんいる。運命に見放され、それでも抗い止まっても歩き続けようとする人。そいつらを集めて、この国のために尽くす組織を作ろうと俺は企んでいる。
闇を見た俺が、今それに対抗できる力を持つには似て非なるものが一番いいのだと。


「あいつにこの国を潰されないためにも……。猶予は、サイラスが十八歳になるまでなんだ。たのむ」

「……あなたの願いを叶えるのが私の勤めですよ」


いいでしょう、と笑ったサントリナに俺は微笑んだ。腹心の部下。俺の右腕。絶対の信頼を与えられる。彼女がいたからこそ、俺は挫けずここにいられる。


「では、あの二人には明日から励んでもらおう。まず手配したほうがいいもの
は……」

机の上に散らばった書類に手をかけようとした瞬間、


「サラ様っ!」


中庭の離れのほうから爆発音が闘こえた。昼間だというのに、奇襲がはじまったようだ。多分、昨日潰した闇組織の残党達だろう。すぐに武器を持ち書斎を出た。中庭のある北の棟、そして今俺のいる東の棟はめったに人は立ち入らないので使用人たちが怪我をすることはないだろうだが、


「サラ様、北の方にはあの二人が」


そうだ、あの双子が北の棟の室で眠っている。急がなければ






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