小説 | ナノ

 

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U、Chocolate



「俺さあ、ガルーシャ・サジャータっていうんだ。よろしく」


そういって手を差し出す黒髪の男ことガルーシャ。ニコニコと笑顔が絶えない男、だけど私を助けた男。手特ちの金品で、彼は私を買ったのだ。


「……アイリスよ」


一応差し出された手を握り返して、自分の名前を呟いた。大きな手は私の手をいとも簡単に覆ってしまう。それがなんだが力の差を見せ付けられたようで、少しだけ悔しくなった。元はといえば、この男がいなければ私はあのまま一人で逃げられていたかもしれないのだし。
だけど、今となってはそんなこと、過ぎてしまったことだし変えることもできない。それよりも、気になってしかたないのは……。


「…なんで?」

「ん?」

「なんで、助けたの?初めて会う人間を、それも娼婦」


客を取ったことはなくても、曲がりなりにも娼婦である自分は、世間からあまりいい目では見られない。見た感じ娼館に通うような顔じゃないし。(遊び半分、ってことはありそうだけど。)気になっていたことを素直に聞いてみた。だけど、返ってきた答えは、私の想像していたものとは違って、


「いや、ただ面白そうだなー、と思ったから。ただそれだけだけど?」

「……え?」

「ああ、あとさ」


そしておもむろにまたマントの中をあさり、小さな紙包みを取り出すと私の頭の上に置いた。落ちそうになっていたのを手にとれば、それは小さなお菓子。


「俺悪いこともしょっちゅうしてるからさ。たまには良いことしないと死んだあと大変でしょ?」


ポンポンと私の頭を撫でるガルーシャは、当然でしょと言わんばかりの笑顔。はじめにあったときから可笑しいとは思っていたけど、まさかこんなことを言い出すは思っていなかった。変な人。


「じや、暇だからどっか遊びにでも行く?」


面白ければなんでもいいよ。そう言って彼は歩きだす。

ニコニコ、彼の表情は変わらない。


***


面白そうな子を鬼つけた。茶髪でオレンジ色の瞳を持った女の子。
なんだか色々と大変みたいで、トリカゴから逃げてきたらしい。自由にはしてあげないけど、近くに置いておけば退屈しなさそうな感じ。
まあ、

退屈すぎたら壊せばいいしね






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