-5- 五、戻された世界の後に、 小屋に戻った後、彼らを待ち受けていたのは赤に染まった老夫婦と山賊だった。アルが山賊を相手に戦ったが、シエラが捕らわれてしまう。そのまま攫われようとしたとき、サイラスが山賊たちに牙を向いた。 その後サイラスは残りの山賊を外へと誘き寄せ、自身もボロボロにさせながら二人を死守した。 そして、二人の目の前から姿を消してしまったのだ。 「サイラスっ! サイラスーっ! どこにいるの? サイラスっ!」 「サイラスっ! どこにいるっ? サイラスっ!」 二人で森の中を探し回るが、サイラスの姿は見えない。見えるのは赤い血の痕と、事切れている山賊たちだけ。もう、この森を探し回って半日はかかる。 それでも一向に見つかる気配もない。アルが諦めかけたその時、 「アルっ! 早くこっちに来て!」 シエラの声が近くから聞こえた。近寄り、シエラしゃがむところを見れば、 「見つけたかっ、て……おいっ! 大丈夫かっ!」 一人の青年が倒れていた。山賊とはいえないような格好のその青年は体中を真っ赤に染めて、浅い呼吸をしている。アルはすぐにその青年をおぶさり、小屋へと運んだ。 その青年が目を覚ましたのは、老夫婦の亡骸を埋葬し終えてから三日程たった頃だった。 「助けていただいて、ありがとうございます。僕は、サイラス。サイラス・レーダ、と言います」 偶然と言うべきだろうか、同じサイラスがいなくなり、そして拾われる。シエラもアルも一度顔を見合わせ、サイラスと名乗る青年をもう一度見た。 「お言葉に甘えて、この傷が癒えるまでよろしくお願いします」 「わかりました。私はシエラといいます」 「アルだ」 見知らぬ人間に気を許してはいけない。けれど、この青年は見知らぬ人間ではない。そう二人は思えて仕方なかった。 「「よろしく、サイラス(さん)」 新しい生活が、また始まる。 *** 昔々、ある一つの王国に心優しい三人の義賊がいました。 その三人のうち二人は双子で、もう一人はその双子ととても仲良しでした。 でも、その双子ともう一人は時間に引き裂かれてしまったのです。 一人の義賊は時間を下って、またその双子に会いました。 でもその双子は黒い影に意地悪をされていたのです。 一人の義賊は黒い影から双子を守るために一つの枝を取り出しました。 一人の義賊はその枝を使って黒い影を追い払って、双子を守りました。 双子は一人の義賊にありがとうといいました。 三人でずっと仲良く暮らしました。 めでたし、めでたし。 -End- ※振り返りとオマケは <擬えた銀の鎖を腕に巻く>のところで一緒にします 前へ 次へ |