-3- 三、新しい家族 「爺様! 婆様! この子を見てあげて!」 シエラがそう書って小屋に駆け込んできたのは太陽が西に少し傾いた頃だった。老夫婦は二人の無事に安心したのち、アルが抱えていた狼の子の手当てを始めた。 「……治る? この子、死んだりしないよね?」 シエラの今にも泣き出しそうな声に老母は大丈夫、心配をしなくていいと言い、老父はアルに今までのことを聞いていた。 いいつけを守らなかったのはいけなかったが、それでも傷ついた狼の子を連れてきたのは偉いと褒めた。 「……この子、どうするの?」 「……お前らはどうしたいんだ?」 手当ての済んだ狼の子を覗き込みながら、シエラが老父にたずね、そして帰ってきたのはそんな答えだった。二人は顔を見合わせ、どうすればよ いのかと首を傾げていた。そしてしばらくして、 「僕は、親元に帰してあげることだと僕は思う。だけど、霧が晴れているってことは、親は近くにいないからそれは無理だと思う」 「だから、ここで育てたい。私たちが、この子を育てたい」 真剣な眼差しで見上げ、見つめる二人を見て、老夫婦は黙ったままだった。シエラとアルも、ここで目をそらしてはいけないと思いそのまま。 そして、 「……いいだろう。そのほうがお前さんらのためにもなる」 老父の一言に、二人の表惰が明るくなった。シエラは眠る狼の子の頭を優しく撫で、 「サイラスの木の下にいたから、名前は『サイラス』。今日から貴方は私達の家族だよ」 それから、シエラとアルはサイラスをつきっきり看病した。何度も何度も体を擦り、頭く撫で、優しく語り掛けていくうちにサイラスも少しずつだが二人に心を開くようになった。 「もう包帯はとっても大丈夫だって、サイラス。良かったね」 シエラがそう書い、頭を撫でればサイラスもその手に擦り寄る。シエラはそれが嬉しいのずっとニコニコしていた。 「シエラ、外に出よう。サイラスのリ八ビリもかねて」 「うん、サイラス、行こう?」 「ワウッ!」 子犬のような鳴き声を上げ、テクテクと二人の後をついていく。包帯がとれたのが嬉しいのか、いつもよりはしゃいでいるように見えるサイラスに二人も、遠くからそれを見ていた老夫婦も笑った。 家族が増えた。 前へ 次へ |