小説 | ナノ

 

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 ねぇ、新しいお話知ってる?

  なんのお話?

 昔のお話。

  この国のお話?

 そうだよ、ずっと昔にあったんだって。

  どんなお話なの?

 えっとね・・・・。



一、仲良しGemini


静かな泉のほとりにその小屋はあった。森の奥、町からとっても離れた場所にあるその小屋には小さな家族が暮らしていた。年老いた老夫婦と、仲のいい幼い双子の女の子と男の子。賑わった世界から孤立したその家族は、誰にも知られていない。だって、その家族には昔からの言い伝えがあったから……。


「ねぇ! 今日は何して遊ぼうか?」


元気よく小屋の外に飛び出した子供はくるりと扉へと向いた。その扉から出てくるもう一人の子供は欠伸をしながら、外の朝露に濡れた草を踏みしめた。


「何でもいい」


単調に答える声音にもまだ眠気が残っているのがわかる。閉じた瞼をこすり、数時間前に上ったばかりの太陽と空を見つめ、目を細めた。

 女の子の名前はシエラ。
 男の子の名前はアル。

双子であるこの二人は生まれた時からずっと二人で、ずっと一緒。この泉の近くの小屋で育った。
八つになったばかりの二人。特にシエラは遊びたい盛りだ。今日もアルはシエラに起こされ、外に連れ出されている。


「爺様! 婆様! 遊びに行ってくるね!」

「日が高くなる前には戻ってくるんだぞ」

「はーい。アル、行こう!」

「ん……眠い」


アルはそう言いながらも、差し出されたシエラの手をとる。シエラは一度微笑んで、アルの手をひいた。


 
まだ幼い二人は、まだ知らない。

何故、町からこんなに離れた場所に住まなければならないのか。
何故、世界から隠れるように暮らしているのか。




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