小説 | ナノ

 

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五、終わりは釈然としないまま


「本当に、ありがとうございました。」


深々と、僕は頭を下げる。あの屋敷を出られたのは、目の前にいる二人のおかげだ。


「ほらほら、顔上げて! そんな気にしないの! サイラスは捕まりたくて捕まったわけじゃないんだし。ねー、アル」

「シエラの言うとおりだ。それに俺達は王からの命令でお前を救出するよう言われていたからな」


頭を上げて二人を見れば、とても嬉しそうに笑っている。何が嬉しいのだろう。それに、一つ気になることがあった。何故、僕があの屋敷にいたことを知っていたのだろう?


「あの……。なんで、現王陛下が僕を……?」

「知りたい? じゃあ、一つ質問! サイラスは私たちがなんで怪盗行為をしているか知っていますか?」

「は、い。教えてくれましたよね? 現王陛下直属の裏組織に所属しているからと……」

「うん。君はそれを知ってしまった意味を理解できるかな?」

「…………もしかして」


嫌な汗が頬を伝う。どうか、この考えが外れてほしい。そう切実に願った。が、それは叶わず……


「陛下の命により、組織の情報漏洩を防ぐため、サイラスには私たちの組織に入ってもらいます!」

「…………」

「お前の記憶力は目を見張るものがある。陛下はそれを知ってお前を手元に置きたいとおっしゃられていた。騙すようで悪いが、それなりの待遇が得られる。憎まないでくれよ」

「…………」


先程のアルフレードさんの言葉の理由がわかった。僕が組織の存在を知ってしまえば、僕はこの選択肢を選ばざるおえなくなる。選ばなければ、僕の人生は明日で終わるだろう。

二人の後ろで輝く月は、僕を嘲笑うかのように僕に大きな影を落とす。僕は忘れない。忘れることなど出来ない。


 二つの影が、美しく笑った。



「「ようこそ、私(俺)たちの世界へ!」」




-End-
→次ページにて振り返りとオマケ小話



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