Gift | ナノ

□りり様


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時刻は午後8時を過ぎた。
念願の教師になって一週間…馴れない業務に苦戦して今日もこんな時間になってしまったが、見上げた星空はとても綺麗で…4月のひんやりした空気が心地よかった。



「…春奈さん?」

明日の休みは何をして過ごそう、とぼんやり考えながら校門を出ると後ろからふと名前を呼ばれその声に振り向くと、外ハネにセットされた銀髪に整った顔をした優しい面持ちの青年が月明かりに照らされ立っていた。

「やっぱり、春奈さんでしょ?」
「…吹雪、さん?」
懐かしいその姿に、私が驚いてその青年の名前を呼ぶと彼は久しぶりだね。と優しく微笑んだ。

「本当、久しぶりですね」
夜の道を二人で並んで歩く。
「10年振りくらい、かな?」
「10年かあ…、吹雪さんよく私の事分かりましたね。私最初びっくりしちゃいましたよ」
「うん。僕もびっくりしたけど…春奈さんあまり変わってなかったから…」
ちらりと私を見定める吹雪さんはにこやかに言った。
「どっどういう意味ですかそれ!?もう、吹雪さん酷い!」
私だってちゃんと成長しましたよ!と膨れて見せると「え?いい意味でだよ?」と彼は笑った。

あはは、と笑う彼は優しい少年の面影を残しながらも背はぐんと伸び男らしく成長していた。
その姿が、私は嬉しくもあり…でも何だか少し、寂しかった。
叶わなかった私の初恋の人が、私の知らない所で大人の男性になっていたから…。

「それにしても、吹雪さんは何でこっちに?」
「ん?うん。ちょっと会いたい人が居てね」
そう言う吹雪さんは何だか切なそうに、私の知らない大人の男の人の顔で笑った。
その事に、どきんと動悸が走った…
どこと無く焦燥感に似たそれを、私は振り払った。

「え、今からですか?」
ふと腕時計を見れば時刻は午後8時半になるところだった。
「うん…でも、連絡もしないで急に来ちゃったからなあ」
と彼は苦笑する。
「友達ですか?」
「うーん…友達っていうか…初恋の人?どうしても諦めつかなくって…衝動的に仕事終わりに最終の飛行機で来ちゃったんだよね」
帰りの足がないから今日は染岡くんの家にでも泊めて貰っちゃおうかな、と…吹雪さんは爽やかに笑う。
あ、この顔は知ってる。
だけど私は、吹雪さんの口から出た「初恋の人」と言う単語に胸が痛んだ。
また動悸がする…どうしてだろう……
私の初恋の人に、初恋の人が居た事がショックなのだろうか…
彼の初恋…それがいつの事なのかは分からないが…私の初恋は最初から叶うはずがなかったのだと今知ってショックなのだろうか…
それとも私はまだ……好き、なの?

だけど今、もしそうだとしたら私は失恋した事になるんだろうか…

「連絡、してみないんですか?」
そう言いながらもずきずきと胸の奥が痛んだ。
「んー…そうだね。して、みようかな…」
そう言って吹雪さんは立ち止まってジャケットのポケットからケータイを取り出した。
私も彼に合わせてその場で立ち止まる。

「番号、変わってないといいんだけど…」
10年振りだからなぁ…とケータイのボタンをゆっくり操作して行く吹雪さん。

そして目当ての番号を見付けたのか、吹雪さんはじっとディスプレイを睨んでいた。
「…吹雪さん?」
押し黙る彼に声をかけると
「…何か緊張するな」
と…照れ臭そうに笑う吹雪さんは、一度はあ…と深呼吸をすると発信ボタンを押してケータイを耳に押し当てた。
何故か私がドキドキしてしまう…。
息が、胸が苦しい。
ああ…やっぱり私の初恋は本当にまだ終わってなかったみたい…
だけど…まだ彼が好きだと気付いた今、これから失恋する事になるなんて…

すると私のバッグの中から聞き慣れた着信音が鳴り響いていた。
もう、誰だろうこんな時に…今電話に出れる気分じゃないんだけどな…
と心中で呟きながらバッグの中からケータイを取り出す。
たいした相手じゃなければ無視してしまおうと思ったが、ディスプレイに表示されている着信相手に…私は目を疑った。
どうして…

震える指で、通話ボタンを押してケータイを耳に押し当てた。

「…もしもし」

「『もしもし、春奈さん?僕、どうしても君に伝えたい事があるんだ…聞いてくれるかな?』」

ケータイから聞こえて来る彼の声は、目の前にいる彼の声よりも少し遅れて耳に届いた。
その時の吹雪さんの恥ずかしそうに微笑んだ顔は、少年の頃と変わらない…私のよく知る彼の顔だった。





……あとがき…………

キリ番3100
りり様リクエストで10年後の吹春で、10年振りに会った二人のお話…です。

なんか毎度の如くgdgdですみません…OTZ
無理矢理過ぎた…
しかし私は楽しく書かせて頂いちゃいました←

リクエストありがとうございましたm(__)m
りり様のみお持ち帰りフリーです。

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