Gift | ナノ

□多紀様


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私の好きな人はとんでもなく天然だ。
どんなにアピールしても持ち前のド天然でいつもかわされてしまう…。

例えば…
「源田さん、すきです」
緊張で倒れそうなのを必死で堪えて、爆発しそうな心臓を必死で宥めて…直球勝負!と本気で人生初の告白すれば…
「鋤?家庭菜園でもするのか?」
と、返って来る結果に。
「……違います…」
どうしたらこの流れで「好き」を「鋤」と間違えられるのか…
これにはさすがに前の日から緊張で眠れなかったのがバカバカしく思えて来たものだ。


「…源田さん、私とお付き合いして下さい」
何度目になるだろう…最近ではドキドキはするものの、さほど緊張しなくなって来てしまった告白をする。
「いいぞ。何処にだ?」
…やはり予想していた返事が源田さんから返ってくる。
「……ち、違います…あの、そうじゃなくて…」
どうしたら伝わるのか…
じっと顔を見つめてみるも、彼は普段と変わらぬ表情で首をかしげた。
「ん?どうかしたのか音無?」
「…何でも、ないです」
断念。


「…もしかして、さりげなく断られてるのかもしれない…」
学校の帰り道、そう私は頭を抱える。
だっておかしいもの。
確かに天然ではあるけれど、普段はしっかりしている源田さんがここまで気付かないなんて…いくらなんでも天然の域を超えている。

「いや…多分そっちの話に免疫がなくて本気で分かってないだけだと思うぞ?」
そんな私を見た隣を歩くお兄ちゃんが苦笑する。
最近では「男女交際なんぞ断じて認めない!」と言っていた兄にまでフォローされてしまう始末…

「…いくら疎くてもここまで分からないもの?」
「…まあ、あいつなら有り得なくもないと思うが…」
私が詰め寄ると、お兄ちゃんは困った様に頭を捻る。

すると前から噂をすれば、な人物が歩いて来る。
「お、鬼道、音無!今帰りか?」
こちらの姿に気付いた源田さんが、手を挙げ小走りで近付いて来た。
突然の遭遇に、私は焦り反射的に顔が赤くなる…
「源田、珍しいな…お前とこんな所で会うなんて…と、そうだ源田いい所で会った」
そうお兄ちゃんは何かを思い付いた仕種をした。
「俺は今から急用があってな、春奈を家まで送ってやってくれないか?」
その言葉に私は口から心臓が出るんじゃないかと思うほど飛び上がった。
「おっお兄ちゃん!?何言って…」
何よ急用って!?
そんな事一言も言ってなかったじゃない!
わざとらしい兄の気遣いに私は口をぱくぱくさせるしか出来ない。
すると…
「ああ、分かった。任せてくれ」
「へッッ!?」
何の躊躇いもない源田さんの了承の返事に私は裏返った声を出した。
「そうか、じゃあ頼んだぞ」
そしてお兄ちゃんは私の肩をぽんと叩き「とりあえず頑張ってみろ」と小声で言い本当は用もない方向へ足早に去って行ってしまった。

いきなり二人きりにされ、私は思考がぐちゃぐちゃなまま立ち尽くしていると
「じゃあ行くか」
と源田さんは言う。
その声ではっとなり「はい」と反射的に返事をする声がまた裏返った。

「す、すみません…源田さん、あっち側に何か用があったんじゃないですか?」
これだとさっき源田さんが歩いて来た方向に戻る形だ…と、何だか申し訳なさで一杯になる。
「ああいや、大丈夫だ。用は済んだんだ」
「そうなんですか?」
あれ?だけど源田さんの家はあっちの方向じゃないはず……もしかして私に気を使ってくれてるのだろうか……そう思うと、胸がきゅう…っと締め付けられるような感覚。
やっぱり好きだなぁ…と思う。
ドキドキと脈拍が上がる…
すぅ…と息を吸い込み、手を伸ばして隣を歩く源田さんの手を握った。
すると源田さんは足を止めて私を見下ろした。
「…音無?」
「あ、の…源田さん…私」
彼の手を握る手が奮える。
「わ…わた…私…」
周囲にも聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいに心臓の音が大きくて、早鐘のように脈を打つ。
ああダメだ…どうしよう、泣いてしまいそう……

「…音無?どうした?」
奮える私の手を優しく握り返して源田さんは私の顔を心配そうに覗き込んだもんだから、とうとう堪えきれずに涙が目から溢れ出てしまった。
それを見た源田さんがぎょっと目を見開きわたわたと慌て出した。
「おと、おとなし!?ちょ…ちょっと待て!使ってないタオルがあったはずだ…ッ」
スポーツバッグの中を漁り出す源田さんの制服の裾を私は掴んだ。
「…すきです。源田さんがすきです大好きなんです…」
お願いだから気付いて…

するとふわりと柔らかい物が顔を包んだ。
目を開くと、それは真っ白なタオルで…源田さんはそれで私の目から溢れる涙を拭っていた。

「…俺も、音無が好きだぞ。」

そう言う源田さんは、とても優しい顔をしていた。

「…あの…私の好きは恋愛の好き、ですよ?」
だけど、もしかしたらまだ分かってないのかもしれない。私がお兄ちゃんの妹で、自分にとっても妹みたいで好き、と言う意味なだけなのかもしれない。
そう思って私がそう言うと、源田さんはキョトンとした。

「…?俺もそうだが?」
その言葉に心臓が飛び跳ね、顔が熱くなる。
「……音無?」
押し黙った私を源田さんがキョトンと見下ろした。

「…源田さん、すき」
そう言って見上げると、源田さんは優しくはにかんだ。
いつもは大人びている源田さんのその表情が、何だか子供っぽくて可愛くて…年上にそんな事思うのは失礼かもしれないけど、でも可愛くて…繋いだままだった手を私がきゅっと握ると、源田さんもそっと握り返してくれた。



「源田さん、本当にあっち方面に用なかったんですか?」
「ああ、大丈夫だ。途中で会えたからな」
「…?」
「音無に会いに行こうと思っててな」
「わ、私…ですか!?」
「ああ、こないだの…鋤じゃなくてスキーだったのかと思って、スキー場のパンフレットを貰って来たんだ」

「……違います」

そんなやり取りに、これからも意思疎通には苦労しそうだな、と思ってしまった。





…………あとがき…………
遅くなってしまいすみませんでした(>_<)
キリリク1900
天然な源田と春奈です。

すみません…何だこれ…
gdgdでごめんなさい…OTZ
でも書いた当人は楽しかったでs←

こんなのですが…
よろしければ…(;´ω`)
多紀さまのみお持ち帰りフリーです!
リクエストありがとうございましたッ!!!!

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