Gift | ナノ

□夏雪様


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走る。
走る。
とにかく走る。

「音無!待てって!」
「春奈さん!何で逃げるの!?」
風丸先輩や吹雪さんの呼び止める声も無視してひたすら走る。
「こ…っ来ないで下さぁい!!!!」
必死に走るが…肺がひゅうひゅうと悲鳴を上げている。
そろそろ限界だ。それに、普通に考えてあの駿足二人から逃げ切れる訳もなく、呆気なく目の前には風丸先輩が、後ろには吹雪さんが…と挟み込まれてしまった。

「音無…!何で逃げるんだよ!?」
「か、風丸先輩と吹雪さんは何で追いかけてくるんですか!?」
「だって春奈さんが突然逃げ出すから…」

がくがくと限界を訴える足とバクバク脈打つ心臓…
息を肩でしている私は思わずその場にへたり込んだ…。

「おと…音無さん!」
後ろから息を切らせた立向居くんが近付いて来た。
「音無さん、急にどうしたんだい?」
ヒロトさんも一緒だ。

ああ…ついに追い付かれてしまった……
そう、私は逃げていた。
この4人から…

「何かあったの?」
優しく声をかけてくる吹雪さん…その言葉にぶんぶんと頭を振った…。
いや、何かはあったのだが……今の私には否定するしか出来ない。
「…音無?」
風丸先輩が心配そうに顔を覗き込んでくる。
ああ…どうしよう……お願いだから二人ともそんなに優しくしないで下さいよ…

涙が出そうなのを必死に堪えていると、ふわりと頭を撫でられた。
「音無さん、大丈夫?」
見上げると、ヒロトさんが優しく微笑んでいた。
「ヒロトさん…」
すると私の頭を撫でていたヒロトさんの腕が突然誰かの手に掴まれた。
掴んだ腕の先を見ると、にっこりと笑顔を浮かべた立向居くんがいた。
一瞬、時が止まった気がしたが…
「春奈さん、立てる?」
と、手を差し延べて来たのは吹雪さんだった。
しかしその吹雪さんの腕も誰かの手が「がっ!」と効果音が付くくらいの勢いで掴んだ。
風丸先輩だ。
私はごくりと渇いた喉に音を立てて唾を飲み込んだ。

今、私を取り囲む形で4人は立っている…。
ヒロトさんの腕を掴むにこやかな笑みの立向居くん…立向居くんに腕を掴まれ微笑んだまま無言のヒロトさん……
DEの時ばりの冷ややかな目をして吹雪さんの腕を掴んでいる風丸先輩…、風丸先輩に腕を掴まれ穏やかな笑みを浮かべてはいるが目が据わっている吹雪さん…

背筋を冷たい汗が伝う。
ああ、嫌だな……

「音無…、さっきの話だけど……俺だろ?」
そう、いつもより低いトーンで言ったのは風丸先輩…

「何言ってるの風丸くん。僕に決まってるじゃないか。ね?春奈さん。」
口元は優しく笑ってるけど、やっぱり目が据わっている吹雪さん…

「俺を選んでくれるよね?音無さん。」
ヒロトさんは立向居くんから目を反らさずにいつもの優しい声で言う…

「音無さん。俺、だよね?」
そう言う立向居くんのいつもの人懐っこいその笑顔が何故だか今日は恐い…

「あ、の……私…は、」

重く冷たい空気にドクドクと動悸が走る。

そう…それはほんの10分程前………私は告白された。

この4人に、同時に。

そして逃げたのだ。
本当は逃げずにちゃんと応えたかった…
でも私は逃げた。

この、今も再び漂う重く、重く重く冷たい不穏な空気から。

そして結局…呆気なく追い付かれてしまい、今に至る訳だ。

双方を見据え合い、まるで戦闘体制な4人を恐る恐る見渡し……私は…


再び地面を蹴って全速力で走り出す。





※※※※あとがき※※※※

キリ番600
夏雪さまリクエストで、逃げて捕まる愛され春奈……です。

す……すみません…
何だかとんでもなく違う方向に……OTZ
シリアスにもなってないですね……てか何一つリク通りじゃなくてごめんなさい…
人数も、もっと出したかったのですが…力及ばず残念な結果に……

こんなのでよろしければ、夏雪さまのみお持ち帰りオッケー

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