Gift | ナノ

□ナナ様


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高校の入学式、新入生の中に藍色のショートボブにトレードマークの赤渕メガネを頭に乗せた彼女の姿を見付けて思わず「あ」と声を上げた。
「音無!?」
それに気付いた音無は、俺の姿を捉えると満面の笑みを浮かべて元気に手を振る。
「風丸先輩!」
お久しぶりです!と駆け寄ってくる音無に俺は驚きを隠せずにいた。
そんな口をだらし無く開けてぽかんとする俺にお構いなしに音無はにこにこしている。
「お正月に皆で集まった時振りですね」
「あ、ああ。そうだな」
「あ、そうだ先輩。今日帰り空いてますか?私電車とかまだよくわからなくて…よかったら一緒に帰ってくれませんか?」
可愛い後輩に上目使いでそう言われては断れるはずもない。いや、正確にはこんな好機…断る理由もない、か。
「ああ、今日は部活もないし…いいぞ」
そう言うと、音無はとても嬉しそうにありがとうございますと笑う。
ああもう、心臓がざわつくからそんな顔はやめてくれ、顔に出てしまいそうなのを必死で堪えながら放課後に校門前で待ち合わせをして一年の教室に向かう音無を見送る。

本当に驚いた。
まさかまた、音無と学生生活が送れるなんて。
今頃熱くなる頬を手の平で覆って壁にもたれ掛かっていると、一部始終を影から見ていたクラスメイトに寄ってたかってからかわれた。どうやら俺が音無に気があるのが後ろ姿からバレバレだったらしい。
「お前ら絶対に余計な事言うなよ!一応ここまで必死に“いい先輩”築き上げて来たんだからな」
にやけた顔で囃し立てる友人らに素直に認めてそう釘を刺しておく。
ここまで来たらはっきり言おう。俺は音無がずっと前から現在進行形で好きだ。故に今、嬉しさのあまりこっそりガッツポーズを取るくらい舞い上がっている。

HRが終わり校門に急ぐと音無はトレードマークの赤いフレームのメガネをいつもの定位置ではなくきちんと目にかけて辺りをキョロキョロと見渡していた。
やがて俺を見付けた音無は大きく手を振りながら俺の名前を呼んだ。
「風丸せんぱーい」
それに片手を軽く上げて応え音無の元へ駆け寄る。
少し前まではよくあった光景…部活中、ドリンクとタオルを渡す時に音無はよくこうやって俺の名前を呼んでくれていた。
「悪い、待ったか?」
「いえ、全然大丈夫です!私もさっき終わったばっかりなんです」
へら、と柔らかく笑う音無がやっぱり愛しくて堪らなかった。

「本当、驚いたよ。てっきり音無は鬼道と同じとこ受けるんだと思ってた」
「お兄ちゃんのレベルに合わせてたら私持ちませんよ…」
「そうか?音無なら狙えなくなかったろ?」
「無理ですって」
そう苦笑する音無。
「それに、お兄ちゃんにも無理するなって言われましたし…わざわざ高校同じとこ行かなくても会いたい時には会えますし」
「そうか」
そんな他愛ない会話をしながら電車に乗り、降りる駅を確認する。普段電車を使わないにしても乗り継ぎがあるわけではないし乗る電車さえ間違えなければ大丈夫だろうと確認すると音無は元気よくはい!と返事をする。

「あ、先輩。私またサッカー部でマネージャーやるつもりなのでよろしくお願いしますね!」
「え、新聞部じゃなくてか?」
てっきり高校はそっちに行くと思ってた、と正直に言えば音無はふふ、と意味ありげに笑う。
「はい。だって風丸先輩がサッカー部ですから」
音無のその言葉に足が止まる。そんな俺を置いて鼻唄を口ずさみながら先に進む音無は、数歩先で足を止めて短いスカートを翻して、藍色の髪をふわりと揺らし振り返った。
「せっかく先輩を追いかけて同じ高校入ったんだから、部活も同じがいいんです」
にひ、と悪戯っぽく笑う音無にじわじわと俺の頬は火照る。今、間違いなく格好悪いくらいに顔を真っ赤にさせている事だろう。
「…音無はずるいな」
「そうですか?そんな事ないですよ」
「いや、ずるいよ」
だってお前確信犯だろ。そんな風に言われたら何とも思ってない奴でも気になって仕方なくなるのに…まさか意中の相手に言われるなんて…。
「…っじゃあ、音無は俺の専属マネージャーだな」
音無の右手を取って歩き出すと音無は何言ってるんですかもう!と顔を真っ赤にさせた。
「嫌なのか?」
真っ赤になった音無を見てにやりと口角を上げて言えばじろり、と俺を見上げる。
「…先輩も十分ずるいですよ。嫌なわけないってわかってるくせに」
むうっと頬を膨れさせる音無にそうか?じゃあお返しだな、と言えば更にむうっと頬を膨れさせてきゅっと俺の手を握り返す。
ふと目が合えば、どちらともなく吹き出し笑い合った。



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もう本当に!遅くなって大変申し訳ありませんでしたっ!
やっと仕上げる事が出来ました、キリ番4900ナナ様リクエストで風春高校生パロです。
こういう事でなかったらすみません。書き直し絶賛受付中ですので遠慮なくお申し付け下さい!
ナナ様のみお持ち帰りフリーです。
リクエストありがとうございました!

20111216

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