癒し系マネージャーのあの子は | ナノ

 空間認識能力

「潔くん?」
「あっ名前ちゃん…!何でここに?」
「私はオーバーワークし過ぎてる選手がいないか抜き打ちで見回ってるの。潔くんこそどうしたの?とっくに消灯時間過ぎてるよ?」
「あっごめん。実は今日のゴールで興奮して全然寝れなくて…」



懐中電灯を持ち、薄暗い廊下を歩いていると、そろそろ歩く潔くんに遭遇した。
時刻は消灯時間も過ぎた頃。
明日もみっちり練習はあるのに…と疑問に思ったが、"いかにもドキドキしてます"な顔をしてそんなことを言った潔くんにクスリと笑いが溢れる。



「潔くんのゴールで今日の試合勝ったんだもんね。おめでとう。モニタールームで絵心さんと一緒に見てたんだ」
「え、そうなの?ありがとう!」
「ほんと綺麗なシュートだった。それで、どこか行くの?」
「実はモニタールームで自分の映像見て研究しようかなと思って。ゴールシーンもっかい観たいし…」



まずいかな?と潔くんは様子を伺って来た。
この辺りはチームZが生活しているエリアで近くにはチームZ専用のモニタールームがある。
禁止されているのは無理な運動だ。
まぁ、映像を観るぐらいは許されるだろう。
まだ日を跨いだ時間でもないし……



「大丈夫だよ」
「ありがとう!」









「ていうか、見回りって名前ちゃん一人でやってるの?」
「うん。そうだけど」
「こんな男ばかりのところで名前ちゃんみたいな女の子、夜に一人は危くない!?」
「うーん、意外と大丈夫かも」



とは言え、確かに男ばかりの中で女子が一人、夜間に出歩くなんてこれだけ聞けば誰もが危ないと注意をしたくなるだろう。
だが、流石ブルーロックと言うべきか。
あちらこちらに監視カメラがあり、選手に関しても絵心さんが選んだだけあって良からぬ考えを持つ者は参加していないようだった。

それにいざという時は…



「"秘密兵器"があるから大丈夫だよ」
「秘密兵器…?」
「うん、秘密兵器っ。ほら、着いたよ」
「あ、うん」
「あんまり夜更かししちゃダメだよ?」



チームZのモニタールーム前に到着し、見回りに戻ろうと潔くんに手を振る。
自動ドアの前に立った潔くんに反応し、扉が開いた。
すると、誰もいないはずのモニタールームからは光が溢れていて映像が流れている。



「……潔とマネージャーか。何しに来た?」



そこにいたのはモニターの前に座り込む千切くんだった。



「千切くん……見回りしてたらそこでバッタリ潔くんに会ったの」
「俺は眠れなくてちょっと…。お前は?何してたの?」
「…俺も寝れなくて…。お前のゴール観てた」
「え」



声を発したのは潔くん。
確かに流れている映像は今日の試合…潔くんのゴールシーンだ。

正直、意外だと思った。
だって、千切くんはポジションもこだわりなくて、ボールが自分の方に来ても周りのような必死さを感じることはなくて、まだ彼が本気になっている姿を私は見ていないから。



「そりゃ寝れないよな…。こんな気持ちいいの決めたらストライカーとして最高の瞬間だろ」
「…うん。なんつーかその…ブルーロックに来る前の俺だったら絶対味わえないようなゴールだったから…多分このゴールは一生忘れないと思う…」
「…そっか」



千切くんの隣に並んで座り、私も一緒に映像に見入った。
何度見ても綺麗なダイレクトシュートだ。



「いやーでも、もっかいやれって言われても無理だなぁこのゴールは。なんとなく走り込んでたまたまそこにいただけだし、自分でもまだよく自分の武器のこととかわかってないんだよねぇ…」
「たまたま…ねぇ」



潔くんは“たまたま”と言うけれど、あれはたまたま生まれたゴールなのだろうか…。



「“空間認識能力”が高いんだよ、多分お前」
「ん?何それ?」
「潔くんはフィールド全体を把握したみたいに大きな視野でプレーできる瞬間があるってことだよ」
「そう。ほとんどの選手は皆自分の視野から状況を判断してプレーしてる。お前はまだそれを直感でやってる。
だから、もっと意識的に使えるようになれば…その眼と脳は唯一無二の武器になる。と(ruby:映像:コレ)観て思った」



“空間認識能力”
これを使いこなせるようになれば、潔くんは間違いなくストライカーに近い存在となる。

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