癒し系マネージャーのあの子は | ナノ

 御曹司と天才と

「おいおい何そんなとこで寝てんだよ凪。探したぞ?」



どうすんのこれ…と途方にくれていたものの、救世主が現れたのは意外と早かった。
しかも、私の上に乗っているこのどうしようもない彼もよく知っている声



「御影くん?」
「…え?帝襟さん?」
「助けてください…!」
「あちゃー…」



凪くんの体で私のことは見えなかったらしい。
僅かな隙間から顔を覗かせれば、凪くんと同じチームの御影くんが大変驚いた顔をしていた。



「お前、なんつー格好で寝てんだよ」
「んー?レオ?」
「ほら立て。帝襟さん押し倒してんぞ」



近づいて来てあっさりと長身の凪くんを退かせる御影くんは流石男の子だ。
更に大丈夫?と御影くんは私を優しく起こしてくれて、服についた埃まで払ってくれた。



「すいません、ありがとうございます」
「いや、全然。悪いのは凪だし」



プロフィールを見て“モテそうだなぁ”と思っていたけど、きっとその予想は合ってるはず…。



「押し倒した?……あんた誰?」
「マネージャーの帝襟さんだろ。入寮テストの後、手当してもらったじゃねぇか。体力テストの時もいたの覚えてねぇの?」
「眠たかったから覚えてない…」



とマイペースな凪くん。
“連れてって”って言うくせに私のこと覚えてなかったんだ…とポカンとした。
一方、御影くんはそんな凪くんも扱い慣れているのか「ったくしょうがねぇな…」と文句を言いながらも彼を背負う。



「レオー」
「ほら、お前も謝れ」
「ごめんなさーい」
「ちゃんと謝れ」
「……ごめんなさい」
「ふふっ」
「?」



まるで親子のような2人に思わず笑い声が漏れてしまった。






「君……普段はほんとずっとそんな感じなのね。シュートを打つ瞬間とは大違い」



しかし、あぁーでも…と初めの方はダラダラしていたりゴールネットに寄りかかって遊んでいたことを思い出した。
あんなにやる気なさそうで、練習も隙あらばサボって今だって御影くんの背中でウトウトしてしているのだから、これが本来の姿なのだろう。



「え?帝襟さん今日の試合見てたの?」
「あっ…と、録画でですが、試合は全て見せていただきました」
「マジか。凪のシュート見たか!?すげぇだろ!!」
「え、あ、うん…」
「あのトラップは見たか!?あれはな……!」



何故だかすごく嬉しそうな顔をした御影くんの口は止まらなかった。
キラキラと目を輝かせ、凪くんのサッカーを解説してくれる。



「御影くん…凪くんのサッカーが好きなんですね」
「あーまぁな!凪の技術に一目惚れしてサッカー部に誘ったし」
「確かに凪くんのトラップ技術は桁外れだと思います。あれでサッカー半年歴なんて信じられない。まだまだ伸び代があって、このブルーロックで大きく成長する選手だと私は思っています」
「あんた…ちゃんと見てんだな」
「まぁ、マネージャーですし…」
「いや、すげぇよ。つーかちゃんとした自己紹介まだだったよな。御影玲王だ」
「帝襟名前です。よろしくね、御影くん」
「なぁ、名前って呼んでいい?俺のことも玲王って呼んでよ」
「えっいやでも…」
「いいじゃん、別に減るもんでもねぇし」
「はぁ…わかりました」
「敬語もなしなし!」



あれよあれよと乗せられて、気づいたら御影くん…玲王くんと握手を交わしていた。
凪くんを背負いながら器用だなぁ……






「ねぇ、俺そんなにすごかった?」
「お前、寝てたんじゃなかったのか?」
「後ろで聞いてた」



ひょっこりと凪くんが顔を出した。



「うん、すごいと思う。でも、ここにはまだまだ強い人は沢山いるよ」
「ふーん…。まぁ、どうでもいいや。俺はレオに誘われてサッカーやってるだけだし」
「おい、凪!お前ならすげぇストライカーになれるって!今日だってハットトリック決めてたじゃねぇか!」
「あれはスマホが欲しくてやっただけー」
「すまほ…」



そういえば、ゴールを決めた数に応じて特典があった。
ハットトリック…3点決めれば入寮時に回収されたスマートフォンの返却も入っていた。


「だーかーらー!俺がゲームよりも面白いもんさせてやるって言ってんだろ!?」
「いいよ、別に。俺はゲームで」
「はぁ!?」






「ねぇ、凪くん」
「ん?なに?」
「本気でサッカーやってみない?絶対日本を背負う選手になるよ」



天才が本気になったらどうなるんだろう。
そう思うと、凪くんへの興味が益々湧いた。


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