Saisons | ナノ

春の日

3/21……

今日は春分の日。
当然学校は休みなわけで。
だけど、原稿も終わってやることのない俺は散歩をすることにした。

春「春分の日って言ってもやっぱり寒いなぁ!」

たまには行き先を決めないで適当に歩いてみる。
すれ違う人の会話とか、たまたま同じ道を歩く人の会話とかそういうのを聞いていても楽しいし、何気ない風景も新しい発見になったりする。

そうしてるうちに無意識に足を運んだのは学校だった。

冬「あれ?春陽?」

春「冬麻じゃん。休みなのに会うなんてな!しかも学校で」

冬「そうだね。あ、そうだ」

偶然会った冬麻は何かを思い出したようで。
両手を前に突き出してハイタッチを求めるようなポーズをとる。

冬「はい」

春「…!!」

その一言で俺にはわかった。

春「はい!」

2人「「はいたっち!!!」」

それは俺と冬麻が今ハマってる曲の振り付けの一部だった。
楽しい時、テンションが上がった時にたまにやるんだけど、なんで今?

冬「誕生日おめでとう、春陽」

春「……?あぁ!そっか、誕生日だ!」

冬「忘れてたの?」

自分の誕生日なのに。そう言って冬麻は笑う。

春「いやー最近忙しくて。今日やっと落ち着いたから」

冬「そうだったんだ?」

春「そーそー!疲れたっ!遊びたい!」

冬「だったら夏音と秋羅も呼んで遊ぼうか。」

春「そーうだね!2人なら暇してるだろうし!」

なんて、2人に少し失礼なことを言いながら連絡をして、たまに寄り道をする喫茶店で待ち合わせることにした。

夏「それで、急に呼び出されたんですね。冬麻くんにしては珍しいと思ったら」

秋「だったら誕生日ケーキとか頼まねぇの?」

冬「学生の俺らじゃちょっと高いかな。ほら春陽に払わせる訳にもいかないだろ?」

秋「そっか……」

わかり易くしょぼくれる秋羅。
別に俺は払ってもいいと、2人が来る前に言ったんだけど、冬麻はどうしても払わせるつもりがないらしい。今俺が注文して食ってるのも冬麻が奢るそうだ。
そういうところは律儀というか、なんというか。

春「まぁ、俺はこうして皆で遊べたらそれでいいし!」

秋「春陽がそういうならいいけどさー。あ、欲しいもんないの?プレゼント!」

夏「そうですね。準備してなかったので買いに行きましょう」

春「欲しいもの……うーん」

本当に欲しいものって漫画のものなんだけど、それ頼んだらなんか秋羅にいろいろ聞かれそうだしな。

春「それじゃあさ、ちょっと見たいのあるんだけど、いい?」

秋「いいよ!行こう!」

そして、みんなを連れてきたのは結局文具店に来た。
特に欲しいものはないけど、なんとなく定期的に新しいものがないか見たりして、使いやすそうだったり、面白いものを買ったりしている。

冬「へー。たくさんあるね。春陽の文房具ってここで買ってるの?」

春「まぁ、物と値段見て決めてるけど、だいたいは。ほら、あそこのとか俺使ってる」

指でいつも使っているものを指す。
中の色を取り替えて使うタイプのボールペン。
いまではたくさんの会社でいろんなタイプが売っているけど、ここのやつが使いやすいと思う。

春「あ、夏音のそのシャーペン。夏音に合うと思うよ!」

夏「そうですね、少し重めでいいかもしれません。値段も安いですし」

秋「なぁなあ!これ面白い!」

春「あ、これ新しいのだ!俺まだ見てなかった!面白いな!」

ひたすら文房具をみてまわっていると、すごく書きやすいって評判のペンを見つけた。

使ってみたいけど、学生にしては高い値段で悩んで、結局買うのをやめた。



翌日。
たまに使う俺らのグループラインで冬麻からみんなが呼び出された。

冬「急にごめんね」

春「いや、いいよ。どしたの?」

俺が聞くと冬麻はカバンから丁寧に包装された箱を取り出した。

冬「はい。遅れちゃったけど、誕生日おめでとう」

夏「おめでとうございます」

秋「おめでとっ!!」

春「え?あ、ありがとう!開けていい!?」

冬「うん」

さっそく開けると。箱の中にまた丁寧に入っていたのは、この前皆で遊びに行った時に一人で見ていていいなと思ったボールペンだった。

春「…………!!!!!」

冬「この前、欲しそうに見てたからさ。流石に1人で払うのは高いから3人で買ったんだ」

春「ありがとぉぉぉぉぉぉお!!!」

ホントにホントに俺はいい友達に出会えたなって思った日。
このボールペンは大事に使うことにしよう。


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