そういう時期
--中庭
秋「午後登校って朝は楽だけどめんどいよなー。教室行く気分じゃないし……ん?」
なんとなくベンチからこの中庭の中心にある少し大きな木をながめた。
その木の下には共クラの女の子が寝ていた。
秋「ねぇ君。こんな所で寝てたら風邪ひくよ?」
蒼「……っん……?きみは?」
秋「3Dの向坂秋羅。そっちは?」
蒼「C組の城野蒼依」
お互い自己紹介をすると、また蒼依ちゃんは寝ようとしていた。
秋「だから風邪…はい。これ羽織って寝なね?」
蒼「ありがと……」
俺らこれから卒業すんのに自己紹介って。
また、蒼依ちゃんに会える日があるといいな。
−屋上
春「あ、こんな所に人なんて珍しい。どうしたの?」
俺もそんな頻繁に来るってわけでもない。
来ても締切に間に合わないような日の授業の時だし。
琴「もうすぐ卒業式なんだなって感傷に浸ってたところだよ」
春「キミも3年生か。共クラ?」
琴「そ!稲野琴葉。それで……」
琴葉ちゃんが視線を校庭に向ける。
その先には誰かを探している様子の共クラの男子2人。
琴「あそこの黒髪が幼馴染の直人、金髪が弟の時雨。きみは?」
春「俺は加嘉美春陽。見てのとおり男クラです!それよりあの2人が探してるのって琴葉ちゃんじゃないの?」
琴「そーなんだよねー。でも今は2人の所に行けないや」
春「どーして?」
琴「私だけね、県外に就職しなくちゃいけなくてねー……」
そこで言葉は途切れる。だけどなんとなく察した。
だけど、それはであったばかりの俺にはどうしようもできないこと。
あぁ。もっと早く出会いたかった。
あの幼馴染みの彼より早く。
だったら隣で静かに泣いている彼女を抱きしめられたのに。
そんな資格がない俺は、ただ見てるしかできなかった。
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