不思議なこと(2)
『父さん!母さん!』
あれはいつの俺だろう。
幼いときに父さんも母さんも他界したとは聞いていた。
こんなに幼かったんだな。
『夏音!』
これはさっきのか。
父さんと母さんの時と同じだ。
頭から血が流れていて、意識がなくて。
不思議な夢だった。
また大切な人が失うのかと思うと怖くて体がふるえる。
だけど、ベッドの上の夏音はさっき、俺が寝る前までと違って、苦しそうでもなく顔も青くなかった。
穏やかに眠っていた。
そして、俺の向かいで夏音を挟むように秋羅が寝ている。
2人を起こさないようにゆっくりベッドから離れる。
春「あ、おきた?」
ベッドから少し離れたテーブルのところに春陽がいた。
なんか描いているみたいだけど、いつも見せてくれないから聞かないでおく。
冬「いつのまにか寝てたみたい。おはよう」
春「もう少しで救急車来るって、先生言ってたから秋羅もそろそろ起こさないと。夏音の様子は?」
そういえば今日は会議だったっけ?
冬「今は寝てるよ。秋羅起こしてくるね」
春「お、おう」
寝てるだけでなく、傷跡も消えていたと思う。
あんなに大きく開いていたのに、取り替えた包帯にはほとんど、血が付いていなかった。
冬「秋羅、もう少しで救急車来るって。起きて」
ゆらゆらと秋羅の肩を揺らすとすぐに起きた。
秋「ん……あれ?俺寝てた?おはよう」
春「3人で寝てたよ。あ、そういえば冬麻だけうなされてたけどなんかあったの?」
秋「うなされてた?」
そんなの気づかなかった。
秋羅が聞き返すと春陽は頷く。
冬「そうなの?覚えてないけど……」
もう二度とあんな思いはしたくない。無かった事にしてしまえるだろうか。
3人で不思議な沈黙が続いていると、遠くから救急車の音が聞こえてきた。
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