その言葉
窓側の席の俺は、ほぼ毎日みんなが来るまで空を眺める。
今日の空はいつ雨が降るかわからないような曇り空。
こういう日は早くあいつらに会いたくなる。
─ガラッ─
俺はあいつらが来たと期待し入り口の方を見る。
すると簡単に期待は裏切られ、クラスメイトと思われる女子が入ってきた。
目があったから、俺はそいつに挨拶をする。
夏「おはようございます」
「おはよう、八尋くん。毎日早いね」
夏「色々やることがありますので」
クラス委員長の俺は教室に置かれている花瓶を取り替えたり、机を整理したりと、仕事があるため学校に1番に来ている。
「いつもありがとう」
夏「いえ、仕事ですので」
こうやって仕事の苦労を理解してもらい「ありがとう」と言ってもらえるだけで毎日続けられる。
最初は嫌々やっていた仕事だが、毎日遅刻ギリギリに来るあいつらが偶然早く来たとき、俺が机を整頓しているのを見て、手伝ってくれて、そのときに
「ありがとう」
そう言ってもらえたのが嬉しかった。
まぁ、その日以来ほとんど遅刻だけど。
毎日、「ありがとな」と言って自分たちの席に行く。
―ガラッ―
また入り口が開く。
今度は待っていたあいつらだ。
春,秋,冬『おはよー!夏音!』
「それじゃあまたね、八尋くん」
あいつらから目を離し、女子の方を見てみると、さっきまでそこにいた女子がいなかった。
教室のどこにも。
春「どーしたの?きょろきょろして」
春陽が俺の机の前にちょこんと座って聞く。
夏「いえ、さっきまで女の方と話してたんですよ」
春,秋,冬『このクラス女子いないのに?』
こいつらに言われるまで気づかなかった。
じゃああれはなんだったんだろう。
本当に、こいつらが早く来るといいことがない。
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