てんもんぶ | ナノ


side海仁

夏休みの宿題も合宿中に終わったしまってやることがなく、家に居てもすることがないから、とりあえず街に出てみた。
「っつてもやることねーけど」
琴葉ちゃんと時雨の転校はなくなったってメールで直人から聞いて安心した。
それに瑠李がきのう時雨に直接聞いたらしいし。
そういえば合宿から帰ってきてから泣きそうな顔してたな。
あいつの泣き顔を最後に見たのは小5のとき。
それからはいつも怒ったような顔をしていて、高校で俺に付き合って天文部に入ってからはまたいろんな表情を見せるようになった。
「あ、時雨じゃん。女の子の店の前で何してんだ?」
歩道橋からしばらく見ても、その店の前から動く気配がないから時雨の所まで行ってみよう。

「よっ!こんなことろでなにしてんだ?」
「あ、海仁だ。んーとね、瑠李ちゃんになにかあげたいなって思ったんだけど、何がいいかよくわかんなくて」
律儀な時雨のことだ。多分昨日のお礼とかだろうな。
「あいつ、こういうのすきだぞ」
そう言って、店のウィンドウの黄色と水色のうさぎのガラス細工を指す。
「かわいくていいかも。ありがとう!これにするね!」
「おう。瑠李も喜ぶと思うよ」
早く素直になればもっと可愛いと思うけどな。
あいつの幼なじみとしてできることは少ないと思うけど、これくらいならいつでもしてやれる。

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