てんもんぶ | ナノ


side蒼依

合宿の終わる頃、私はやっと声を出すことができた。
突然風邪をひいて声が出せなくなって直人くんに泣きつき、それから海仁くんが起きてきて2人とも私を心配した。
2人の優しいところは一年生の頃から知っていた。
私達、琴葉ちゃんや時雨くん、瑠李ちゃんに何かあった時、必ず2人がいて守ってくれる。
「…ちょっと寝ようかな」
なんかいろいろ考えているうちに眠くなってきて、最近気に入っている神社にいって人目のないところで眠った。

「……ちゃん。…いちゃん。蒼依ちゃん」
よく聞く声が聞こえて目を覚ますと、その声は琴葉ちゃんだった。
「こんなことろで寝てるからびっくりしたよ!」
「ここね。寝心地いいの」
夏でも熱くないし、誰も通らないところだから静かで落ち着く。
琴葉ちゃんも隣に座って、転校がなくなったことを話してくれた。
「よかった。卒業式までは一緒なんだね」
「うん。でも時雨はこっちに残るって。行きたい学校があるらしくて」
「それじゃあ琴葉ちゃんだけ離れちゃうの?」
たぶん直人くんも琴葉ちゃんのところに行くと思うけど、やっぱり仲がいい天文部のメンバーが離れちゃうのは寂しい。
「そうなっちゃうね。休みの日はこっちに来るつもりだけど、あまり会えないかも…」
「……なんだか寂しいな…」
それから、夏休み中にあるお祭りのこととか楽しいことを話していると、いつの間にか暗くなっていて、琴葉ちゃんと一緒に途中までかえった。

天文部のみんなは優しくて好きだけど、だからって「ずっと一緒」は無理なのかな?

prev / next

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -