てんもんぶ | ナノ


side直人

ーーーー翌日。

琴葉が友達と遊びに行っている間に琴葉達のお母さんに会いにきた。
「こんにちは。お久しぶりっす」
「久しぶりね直人くん。ごめんね?今日琴葉いないのよ」
「いや……今日はおばさんに用事があるんです」
少し不思議そうな顔をされたけど、リビングで待っててと言われた。



コトっとお茶を置かれ、しばらく沈黙。
きっとおばさんも何の話かわかっている。
「琴葉と時雨の転校の話よね?」
「はい。俺たち天文部全員が2人と卒業したいと考えています。卒業までの間、俺の家で2人を預かってもいいですか?」
「でもあなたのお父さんたちは?迷惑でしょう?」
「いいえ。父さん達はいいって言ってくれました。あとはおばさんだけなんです」
またしばらくの沈黙。
いくら幼なじみの家に預けるっていっても自分の子供が離れるのは心配だよな。
あまりいい答えを期待せずに待っていると、おばさんは口を開いた。
「直人くんもわかっていると思うけど、私は2人をここに残すのは心配なの。まだ小さかった頃のこと覚えているでしょ?」
「覚えていたくもないし、思い出したくもないですが」
「それがあるから……」
「でももうあいつらは子供じゃない。それに何があったら俺が守ります。琴葉と時雨とは一緒に卒業したいんです。これは俺のわがままだけど……おねがいします!」



気づけば俺は頭を下げていた。
でも。それでも俺はあの2人を転校させたくなかった。
いつかは離れなくちゃいけない日が来ることは知っている。
だけど、それは今じゃない。そんな気がした。
いや。高校を卒業するまで離れることはないと思っていたから割り切れないだけか。
「直人くんも2人と同じこというのね」
「…………え?」
「昨日、琴葉も転校したくないっていったし、その前には時雨もね。3人ともそういうんだったら仕方ないかしら」
それは2人は転校しなくてよくなったっていうことか?
「直人くんと両親にお世話になるわね」
だけど、卒業まであと半年。
長いような気がするけど短い期間。
俺達は後悔のないように過ごせるだろうか。

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