Diary
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時計の音がチクチクとよく聞こえる。他の音が聞こえない。
俺が今いるのはどこだろう。
なんでこんなに静かなの?
だんだん不安に襲われる。
誰でもいい。誰かの声が聞きたい。
暗闇をさまよっていると、1つの光が現れる。
その光は誰?俺をこの暗闇の中から出してほしい。
「……ら!…………むら!」
俺を呼ぶ、誰かの声。
その声に答えるように、光に手を伸ばし、目を覚ます。
「……幸村!」
目を開けて一番最初に見たのは、目に涙をたくさん浮かべた親友。
「真田?」
その親友の情けない顔を見て俺は「大丈夫だよ」と笑った。
そのあと真田から両親たちに俺が目をさましたことを伝えられた。
俺が最後に残っている記憶は、駅でみんなと他愛のない話をしていたとき。
突然からだがだるくなって、視界が暗くなり、意識が遠退いた。
医者から「もう、テニスのできる体に戻らない」そう言われて、無意識に涙が流れる。
隣で真田が辛そうな顔をしている。
その今の真田に俺はまた苦しめるようなことを言う。
「真田。このことは柳以外の誰にも言わないでくれ」
せめて、柳が真田を支えてほしい。
ほかのみんなも、お願いしたらそうしてくれると思う。
だけど自己主張が激しいあいつらだけど、仲間思いなところもあるから、きっと俺のところにも来てしまう。
だから、
俺の今の情けない姿を見られたくなくてそう言うことを言った。
「分かった。柳には伝えておこう」
「……真田」
「なんだ?」
「いつも、ありがとう」
今まで本当に苦労をかけた。
真田がいたから、俺は俺でいられたような気がする。
どうしても、いま伝えたかった。
「あぁ」
俺に背を向けてそれだけを言って、真田は病室を去って行った。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!」
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