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なまえは一つ年上の女官だ。しかし俺より早く聖域にいたためか、聖域に来たばかりのころはよく世話を焼いてもらったことを覚えている。その件に関しては感謝もしているし恩も感じているが、困るのが未だに変わらないなまえの態度である。それはつまり、なまえにとって俺はいつになっても庇護下に置くべき人間であり、面倒を見てやる子供のままだということ。

「たまには私のことをお姉ちゃんって呼んでくれても良いよ!」

十年以上の時を飽きずにたびたび繰り返されるこの発言に、それが最も顕著に表れているように感じる。

血の繋がりなど一切ないというのに、なまえにとってそれは些細な事らしい。それどころか兄弟が欲しかったのだと言ったなまえはすすんで俺を弟扱いしてくる。何度止めろと言ったところでその言葉が効力を発するのは長くて三日だった。


「ミロ、ミロ」
「呼ばないからな、何があっても」
「どうして? ミロにとって私はお姉ちゃんにもなれない、取るに足らない存在ってことなの……!」

その言葉とともにわざとらしい泣き真似。
そんなことをされたところで姉さんなどと絶対に呼ぶものか。

「誰が、お前を姉などと……!」

そうだ、一度だってそんなことを思ったことは無いというのに!
だがその心が彼女に通じることはなかった。これからも、きっと。その考えに腹立たしさを覚えたが、それが一体何の役に立つのか。


「弟が反抗期でお姉ちゃんは悲しいよ」


もういい加減にしてくれ。

(それは綺麗なばかりでない、いとしいとしといふ心。)

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