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Q1. 鏡よ、鏡、世界で一番美しいのはだあれ?


そんな質問の答えなど知ったこっちゃない。

鏡を覗き込んで、自分の顔に化粧を施しながら幼い頃読んだ御伽噺を思い出す。そもそも好みは人それぞれであり、世界で一番美しい、なんてものは存在しないに違いない。

だが、その質問が世界で一番可愛い人に変わったとき、私は間違いなくアイオリアだと答えるだろう。私の価値観において、それは絶対の真理だ。


「鏡の意見なんてどうでもいいの。もしアイオリア以外の人間の名前を答えたら、私は鏡を叩き割って粉々にした後コキュートスに着払いで送りつけてやるわ」
「…俺が可愛いというのはおかしいだろう」


鏡もとんだとばっちりだと幾分複雑な顔で答えたアイオリアに視線を移す。

鏡の中に反射した世界ではなく、そこにある直接の世界の中に存在するアイオリアに笑いかけた。

「アイオリアは世界で一番可愛いわ」
「馬鹿にしているのか」
「褒めているのよ」
「男に対し、それは褒め言葉にはならない」
「なることもあるわ」
「俺にそれは当てはまらない」
「そう?」


確かに言われてみれば、聖闘士に対し可愛いという表現はあまり相応しくないかもしれない。
世間一般の“可愛い人”は大地を切り裂かないし、岩を粉々に破壊しない…はず、だ。そういう行為をするのはスーパーヒーローであり、やはりヒーローにはカッコいいという表現がぴったりなのだろう。

「…でも…、まあ、どっちでもいっか。リアはかっこかわいいってことにしておこう!」
「理解できん」
「いいのいいの、だって結局どんなアイオリアだって私は好きだもの」


手鏡をパチンと音を立てて閉じながらそう言うと、彼の頬に僅かに赤みが差した。
それを隠すかのように頭をガシガシとかいたアイオリアに笑みがこぼれる。

体を動かしている時は、あんなにかっこいいのに、こうして普段のアイオリアを垣間見ると私には可愛い人にしか見えない。


「リア、可愛い」
耐えきれずにそう零し、くるくるの髪を指で梳きながら笑えば、アイオリアの顔はさらに真っ赤にさせて呟いた。


「なまえのほうが、可愛い」


ああもう本当になんて可愛い人なんだろう!

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