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「さっむい」
「寒いなあ」
「見てみて、息真っ白」

そう言って息を吐いてみれば、アイオロスも笑って息を吐いた。真っ白だ。
「どっちのほうが真っ白かな」
「私だな」
「どうして?」
「正義のシンボルカラーは白と決まっているだろう」
「なにそれ」
そんな取り留めもない会話をしながら人込みを縫って境内に向かって進む。
が中々うまくいかない。というか人が多すぎて、そろそろ潰れそうだ。背の高いアイオロスにはたいして関係ないのかもしれない。けれど、標準日本人よりさらに小さい私には少々きついぞと思いながら、必死で人込みに抵抗しているとアイオロスが私の手を掴んだ。

「私の後ろを歩くと良い」
「ありがとう」
「それと、はぐれるかもしれないから」

そう言って手を握られる。全身寒くて仕方がないのだが、彼が触れたところだけなんだかぽかぽかしているような気がして頬を緩ませた。

「へへ、なんだか恋人みたいだねえ」
「みたいではなく恋人なんだぞ」

くすりと笑ったロスに私も笑って握った手に力を込めた。境内は、まだまだ先だ。

「ロスはお願い何するの?」
「秘密だ」
「じゃあ私も秘密!」
「なに、じゃあ教えるぞ、世界平和、アテナのご健康、聖域の平穏、それから」
「いい、いい!もう良いよ、ていうかロスのお願いいっぱいで神様も大変だねえ」
「最後にもう一つ聞いていけ。今年も、なまえといられるように、だ」
「…き、きざ」
「嫌いではないくせに」

くすくすと笑ったロスになんだか照れ臭かったが私も笑った。そのあとすぐにアイオロスが聞いてくる。
「なまえはなにを?」
「一緒、来年もロスと一緒にいられますように、それから世界が平和なように、それと来年もみんな健康で楽しく過ごせるように!」

その言葉にアイオロスは一瞬目を丸くしたがすぐに笑った。そしてちらりと腕時計を見るとにこりと笑う。

「なまえ、目を瞑って」
「?…どうして」
「良いから、瞑ってくれ」
「うん…?わかった」

なんだかよく分からなかったが言われたとおりに目をつむる。瞬間、唇に何かが触れる感覚とハッピーニューイヤーという歓声、花火の打ちあがる音が響いた。


「…きざ!本当にきざ!!」
「顔が真っ赤だぞ、なまえ!」

年が始まる瞬間にキスをされたということに気が付いて気障だと何度も声を上げたが、アイオロスはさした様子もなく笑った。そして私の手を引く。

「さあ、お参りを済ませよう」
「…うん」
「ああ、なまえ」
「…なに?」

まだ何か変なことをするつもりではないだろうなとわずかに身を引きながらそう聞く。(だって恥ずかしいから人前でキスしないでっていっつも言っているのに、この人は!!)
だが私の考えていることなど露知らぬ彼はにこにこと笑いながら言った。



「今年もよろしく、なまえ」
「…うん、私こそ、よろしくね、ロス!」


Frohes Neues Jahr!

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