「誰も」
私の問いかけに実に簡潔に答えた彼の頬に両手を伸ばして包み込む。
「嘘」
「嘘などつかないよ」
マスクを外して、少しだけ疲れた顔でそう言ったサガがその青い目に私を映し出した。嘘つき、サガのばか。
「嘘つき」
「なまえ、嘘などついていない」
「嘘よ、貴方は待っているのよ」
誰か自分を救ってくれる人を。悲しいねサガ、私はその人にはなれなかったんだもの。でも、じゃあ誰がその人になれるんだろう、か。ずるいよ、その人が恨めしい。
「愛してるわ」
頭を胸に抱いて囁いた。彼は小さく身じろぎをしたけれど特に抵抗をすることもなくその抱擁を受け入れる。
ああひどい人だ。初めから私ではだめだと分かっているのなら、はっきりとそう言って拒絶してくれれば良かったのに!!!
Auf wen warten Sie?
(貴方が待っているのは誰ですか?)