Project | ナノ
あのねえ私あなたにどこにも行かないでほしいんだ?
そう言った彼女が小首を傾げて俺を見上げた。遠くで波の音が聞こえる静かな場所で、なまえが言った言葉がじんわりと自分の脳髄にしみこんでいくのを感じながらそうかと返事をする。

「そうよ」
「その言葉をそのままお前に返せばお前は喜ぶのか」
「返してくれるの?」
つまらなそうに淡々と返された言葉だったが、表情だけはどこか楽しそうでそんななまえに自分も口端を上げて答えた。

「逃がすつもりもないがな」

そうだ、それこそアキレス腱を、いやむしろそのためなら足首から先なんて切り取ってしまってこの海の底からどこからも逃げられないようにしてやれる。そのくらいにはこいつを手放すつもりはない。ここを離れてどこかへ行くと言うのなら足を引きちぎってでも、心臓を引きずり出してでも止めてやる。そう言えば、なまえは怯えるどころか退屈そうなその表情にどこか恍惚とした笑みさえ浮かべてみせた。

「あのねえ私あなたにどこにも行かないでほしいんだ」
だからさ、私を逃がすまいと、そのためにカノンが私の足を引き千切ったとしてもそれで生まれた良心の呵責でも後悔でもなんでもいいからそれで貴方を捕えておけるのなら、ねえカノン

Versuchst du es mal.
(私の足を引き千切りなよ)

top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -