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暇だった。暇、I‘m free.

ちらりと隣で禅を組んでいるシャカを見ても、彼はこちらに見向きもしない。

そもそも起きているの、この人?

目を閉じているから、もしかしたら眠っているのかもしれない。ぴくりとも動かないし、私が来てからずーっとこの状態だし。


あれ、私たち恋人同士だよね?それで私、シャカに呼ばれて来たんだよね?それでここに来てからもう三時間くらい経つんだよね?なにこれ、放置プレイ?

「シャカ、シャーカさーん」

応答なし。
ぴしりと顔が引きつったのを感じた。このやろー、人を呼び出しておいていい態度じゃないか。
じっと彼の顔を覗き込んでみる。さらさらの金髪は長く綺麗だし、睫毛も長いし、正直羨ましい。肌だって白いし、あれ、なにこれジェラシー?

「…えいっ」
「むっ」

意味もなく衝動的にほっぺをぐいと人差し指で押してみたらシャカが声を漏らした。寝ていたわけではないようだ。

「何をするのか、なまえ」
「シャカこそ何で私を呼んだの?すんごく暇」

私だってやらなければならないことがたくさんある。仕事をしている身からすると、せっかくの休日なのに、ぼんやりと時間をつぶすのはなんだかひどくもったいない気がした。

「…紅茶でも淹れてくる」

そう告げて立ち上がった私の手をシャカが即座に取った。細い腕に見えるが、彼は案外力がある。とても振りほどけなさそうだったから早く離してくれと言った私をシャカが見た。青い、目。
彼が私をまっすぐに見るなんて珍しいとその場で動きをとめた私の手をシャカが引く。結局元の位置に座り直した私が彼の青い目に映り込んだ。

「なに?」
「ここにいたまえ」
「でも、」
「いたまえ」
「…はいはい」

まったく我儘なんだから。言うことを聞く私も私だが、と小さく息をついた時、シャカが目を伏せて口を開いた。

「なまえ」
「うん?」
「私は君の作る食事が嫌いではないし、笑った顔も嫌いではない。歌は少し下手だが、決して聞いていたくないというほどでもない。取り留めのない会話さえも嫌いではないな。だがそれら全てはここに君がいなければ手に入らぬものだ。違うか、なまえ」

こちらに顔を向けてそう言ったシャカに頬が緩んだ。歌が下手とか少し失礼な言葉が聞こえた気がしたが、彼の言いたいことを理解してとりあえずそれは水に流すことにした。


つまりそういうことで自惚れでなく私は彼に愛されていると感じるし、それは私の彼に対する感情にもかわりない。温もりも愛も、すべてすべて傍においておきたいのだ。もし私の感情と彼の感情が同じならば私はきっと言葉に秘められた意思をも理解するだろう。

つまるところまあ簡単に言ってしまえば「ここにいたまえ」と再度言った彼に、私が頷くのは仕方のないことなのだ。

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