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びゅうと冷たい風が吹いてマフラーに顔を埋めた。ちらりと隣の一輝を見る。すんごい薄着で、よく平然とした顔をしていられるものだと思う。


「…一輝、寒くないの?」
「お前こそそんなに着込んで一体どこの寒冷地帯に行くつもりだ」
「だって寒いもん!!」


真冬の木の葉など一枚も残っていない木、それから乾燥しきった色のベンチ、目の前で飛沫を上げる噴水も、時折吹き抜ける木枯らしも何もかも寒いという現実を私に突きつける道具に過ぎない。そう一輝に言ったが、彼は実に平然とした顔で鍛え方が足りないと言っただけだった。なんだそりゃ。


そんなことを話しながら先ほど焼き芋屋さんで買った焼き芋を真っ二つにして半分一輝に手渡す。

「ふふー、冬といえば焼き芋だよねー!」
「なまえ、お前つい先ほどは肉まんだと言っていただろう」
「いいの!肉まんとあんまんと焼き芋とお鍋と炬燵と蜜柑!これが日本の冬!」
「お前限定の話だろう」
「うわあ、想像したら食べたくなってきちゃった」
「話を聞け」

呆れたような顔をした一輝に笑いかける。今晩は、お鍋にしようか、なんて。
城戸邸で沙織ちゃんと瞬君、星矢君、氷河君、紫龍君、それから邪武君たちも呼んでみんなでお鍋パーティ、うん、楽しそう。もちろん闇鍋ではなく普通の鍋だ。(あのメンバーで闇鍋など、危険な香りしかしない)


「勝手にすればいい」
「私はーお肉とキャベツ!」
「キノコも食え」
「やだ!変な感触するもん!!」
「キノコも食え」
「嫌いだもん」
「キノコも食え」
「刷り込むのやめて!なんかキノコを食べなきゃいけない気がしてくる!!」
「キノコも食え」
「からかっているでしょう、一輝!!」


頬を引っ張ってそう言う。おお、よく伸びる伸びると笑えば一輝がぎろりと睨み上げてきた。
「ひゃめろ」
「ええ〜?なに言っているのかなまえちゃん、分からないなあ〜」
「…この」
「いひゃいいひゃい!!ごめんなひゃいっ」

思い切りつねり返されて慌てて一輝から手を放す。そうすればすぐに一輝は手を放してくれたが、本当に痛かった…!!

頬が引き千切れるかと思ったよと、痛む頬を撫でた後に焼き芋をかじって立ち上がった。腕を組んでどっかりとベンチに腰かけたままの一輝が私を見る。そんな彼に笑いかけてマフラーを外して彼に付け直してやった。


「いらん」
「駄目、ほっぺが冷たかったよ」

冷えていると言ってもう一度焼き芋をかじり、そして彼の手を引く。すぐに立ち上がってくれた一輝に帰ろうと笑いかけた。
「この公園寒いよ」
「公園に行こうと言ったのはお前だ」
「うん、付き合ってくれてありがとう。でも思ったより寒かったわ」

子供たちは元気なようだけれど、とブランコや遊具で遊ぶ子供たちを一瞥した後に一輝に視線を戻す。

「帰ろう、一輝」
「…ああ」
「あ、スーパーに寄ろうね!お鍋の材料買って行こ!」
そう言って一輝の手をひく。繋いだ手が温かいねと笑いかければ一輝はそれには返事をせずにそっぽを向いて呟いた。

「勝手に買い物をして帰って辰巳に怒鳴られても知らんぞ」
「そんな時はあれだね、沙織ちゃんに苛められたって言いつけちゃうぞ攻撃」
「技名のセンスがないな」
「えー、じゃあ一輝が何かつけてよ」
「…邪心諜報拳」
「なにそれ、こわっ」

じゃり、と足元の砂利が二人分の足音を立てたのを聞きながら手を繋いで冬の公園を出る。
背後ではずっと、子供たちのはしゃぐ笑い声と、木枯らしの吹き抜ける音が聞こえていた。


(次はもうすこし暖かくなったら来ようか!)

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