Project | ナノ
目を開けて最初に飛び込んできたのは薄暗い部屋だった。
けれどカーテンから日が漏れているところから見ても、もう朝だろう。

時計でそれを確認する。
(起きなきゃ。)

しばらく布団の暖かさを堪能してからのそりと起き上がる。



「なまえ」

後ろから包むように抱きしめられて、寝台に逆戻りをした。
犯人は分かりきっていたから特に何も言うことなくされるがままに暖かな布団の中に戻る。

「まだ、こうしていられる」
「でももう朝よ、カミュ」

布団の中で向き直って彼の髪を梳いた。さらさらな髪の毛だったけれどぴょっこりと寝癖が跳ねているのをみつけてくすりと笑う。
くるくると指で髪をいじくって、そうしてカミュの頬に手を添えた。

「もう朝よ」

もう一度繰り返せば、彼は僅かに眉を潜めてそのあと私を抱き寄せた。
頬に彼の髪を感じて、そして同時に彼の香りを感じて目を閉じた。「今日、…城戸の御嬢さんが来るんだって?」「氷河も恐らくともに」、そう呟いたカミュが私を強く抱きしめたから、私も彼を抱きしめ返す。


「大丈夫?」
「…何も問題はない」

あんなにも愛情を注いで可愛がった弟子と戦うことになるねと暗に秘めた言葉にカミュは頷いて、そして私の頬にキスをした。

「ねえ、次の休日は何をしようか」
「なに?」

もう戦いがすぐそこまで迫ってしまった今、そこから逃れることはできない。けれど少しでもカミュが楽になると良いと無理に明るい声を出して話題を変えた。想像通りカミュは少し驚いた顔をして私を見る。
そんな彼の頬にキスをして話を続ける。

「家でゆっくりしようか。聖域を散歩するのも良いかもね」
「ああ、そうだな、なまえ」

薄い笑みを浮かべて頷いたカミュに私も微笑んだ。
そしてそのまま口付けられる。「もう朝だよ」「構わない」強く強く抱きしめられて目を閉じた。
なんて、暖かい。
ずっとこうしていたいけれどそれは無理な話。

それならできる限りの時間をこうしていたいと私は、そして恐らく彼もそう思ったのだろう。
低く耳に心地よい声を聞きながら強く抱きしめあった。


「まだ時間はある」


(だからできる限り今この瞬間を二人の記憶に)

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