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愛している、と言ってみようと思った。
けれどその言葉は私の喉に張り付いて出てこない。

カミュが突然黙り込んだ私を不思議そうな顔で見る。
そんな彼のシャツの裾を握り締めて俯いた。

ああ頬が熱い。

情けないということはよく分かっている。それに、馬鹿馬鹿しいということも。

愛してる、Love、愛、Lieben、

…たった一言ではないか。
初めて恋をした子供でもないだろうに。

それでもどうしたってその言葉は口にできなかった。

「なまえ、どうした?」
「…うん、」

何故その言葉を言うことができないのか。
よく分からない。

恥ずかしい?
好きすぎて言葉じゃ表せない?

考えられるどれもが相応しいようで相応しくなかった。ようするに原因は不明。

「……あのね、カミュ、私ね…」
「なまえ」

私の言葉を遮った彼を見上げる。
綺麗な色の目。
まっすぐに見据えられて口を噤んだ私に彼が薄い微笑みを浮かべた。


「分かっている」

カミュはそれだけ言うと私を抱きしめた。

(分かっている…、だって。)

シャツ越しに伝わる彼の体温をもっと感じていたくて強く抱きしめた。
たった一言だったけれど、それを口にしたのがカミュだったからか、それはとても大きな安心感を私に与えるものだった。ぎゅうと強く抱きしめて口を開く。

「好き、大好き、愛しているわ」
「私も愛している」

するりと、思っていたよりも遥かに簡単に飛び出た言葉は、同じように彼から帰ってきた。すとんと胸に落ちた言葉にさらに強く抱き着いた。

そして気づく。
原因はこんなにも簡単なことだった。

あいしている、たった六文字。それだけで私の気持ちを伝えきれるかどうかが心配だった。

でも、カミュは口にしなくても分かってくれる、そう考えた瞬間、その六文字も十分な力を持つのではないかと思ったのだ。

彼の力はどうやら私にとって絶大なものがあるらしい。

もっとぎゅっとして。
そんな気持ちを込めて、半分ぶら下がるようにして抱き着く。

そうすれば、カミュはもっと私を抱きしめてくれる。
少し我儘かもしれないけれど、それなら次に望むのは「ずっと一緒にいたい」、それだけ。

だって、ねえ。
二人くっついて、一つになってしまえれば幸せだね、


……なんてのぼせた考えを持つ程度には私は幸せだから。

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