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なまえさん、なまえさんと自分を慕ってくれる星矢君たちは可愛い。星矢君は元気で、瞬君は可愛くて、氷河君はクールに見えて結構熱くて、紫龍君は…うん、普通に熱くてそれからいい子ね。そんな可愛い彼らと今日はお茶会をする予定だったのだ。ちらりと見えた腕時計の示す時間が真実なら、もうあの子たちが私の部屋に来ていてもおかしくはない。

「一輝君」
「…」
「ねえ、一輝君」

私そろそろ行かないと、と言えば彼はようやく足を止めた。ついでに掴まれていた腕も解放される。が、すっかり森の中だ。ここから戻るのにはどれくらい時間がかかるのだろうと考えながら木に背中を預けた。まだ彼に要件を聞いていない。

「どうかしたの?」
「…どうもしていない」
じゃあどうして私をこんな森の奥まで連れて来たんだと言いたくなったが、聞いたところで彼はきっと答えてくれないのだろうと納得することにして笑いかけた。

「一輝君も聖域に来ていたんだね」
「…ああ」
「久しぶりに会えて嬉しいよ」

そう言った瞬間、彼が弾けるようにこちらを見た。一体なんだと目を丸くした私と彼の視線が絡む。何を言われるのかと緊張する私に、突然表情を引き締めた彼が「…そのようなことで喜ぶとは惰弱な!!」と叫んだ。

「え?え?」
なんで私怒られたんだろうと考えながら恐る恐る彼の名前を呼ぶ。一輝君はしばらく顔を顰めたままだったがやがてそっぽを向いて呟いた。
「俺は嬉しくなどない」
「そ、そっか」
なんかごめんねと言って、その場を立ち去ることにする。どうしてここに連れてこられたのかよく分からない。だが、彼も会いたくなかった人間と長居はしたくないだろうと思ってのことだったのだが、すぐに腕を掴まれた。

「…どうかした、一輝君?」
「まだ話は終わっていない」
「あ…、ごめんね、話があったんだ?」

何かと聞いた私にしばらく口ごもった彼だったがやがて「お前とする話はない」と言う。もう本当になんなんだ、この子は。

「一輝君、あのねどうして私をここに連れて来たのか聞いても良い?私これから星矢君たちとお茶を飲む予定なんだけど…」
「………お前は、」

いつも星矢たちばかりだと言った彼に自分の目が丸くなるのを感じた。それはどういう意味なのだろうか。もしかして、構ってほしいのか?…いやいやいや、馬鹿なことを考えるのは止めよう。この一匹狼を完全実行している一輝君が私なんかに構ってほしい?…いやいやいや、ないないない。なにか別の理由があるはずだ、考えろ、考えるんだ、私!!

だが特に答えが見つかることもなく、ダメもとで聞いてみることにする。

「…いっ、一輝君も一緒にお茶会する?」

その言葉に目を丸くして私を見た彼に、やっぱり見当違いなことを言ってしまったかと恥ずかしくなる。だが、あわてて謝って訂正をしようとした私より早く一輝君が口を開いた。

「…ここで話をすれば良いだろう」
「駄目よ、星矢君たちと約束しちゃったんだもの。部屋に戻らなきゃ」
「…なら、あと少しだ」
「うーん…」

じゃあここで少し、二人でお話をしたあとに一緒にお茶会に行かないかと問いかける。たぶん、断られるんだろうなと思った私の予想は見事に裏切られることになったわけだが、一体誰がそれを想像できただろうか。


「お前がそんなに頼むのなら行ってやらないこともない」


彼はそう言うとすぐにそっぽを向いた。




奪い取る

(なんで一輝がいるんだ?ていうか、なんで一輝がなまえさんの隣に座っているんだ?)
(ずるいよ、兄さん!僕が座ろうと思っていたのに!)
(なまえさんが遅刻とは珍しいと思っていたのだが、なるほどそういうことか)
(俺はこいつに頼まれて来ただけだ)
(そういえば老師が言っていた。世の中にはツンデレというものがあり…)
(黙れ、紫龍。鳳凰の羽ばたきを見たいか)

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