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「お帰りなさい、アイオロス」
「ただいま、なまえ」

荷物持つわと言って手を差し出したなまえに、書類を受け取ってもらう。

「なまえ、お帰りのちゅー」
「馬鹿にしているの」

ふっと鼻で笑った彼女が書類を手にさっさと宮の中に戻っていく。それを私と一緒に見送っていたサガが苦笑した。「相変わらずというか、なんというか…」「なんの話だ?」「なまえだ、少しきついなと…」「…それが、…いや、…なんでもない」、とりあえず一度宮に戻ってから教皇宮に任務の報告書を提出しに行くと伝えれば、サガは人馬宮の前で待っていると言って立ち止まった。

「いや、長くなるかもしれないのだが…」
「…?のんびりするのなら報告を済ませてからにしろ」
「えーと、ああ、分かった、じゃあすぐに済ませる」

そう伝えて宮内に駆け込む。聖衣を置いて奥へと進む。なまえは奥で食器を拭いていたが、がたりとたった足音にすぐにこちらを向いた。瞬間、飛び込んできたなまえを、両手を広げて受け止める。

「ロスッ、おかえり、それとお疲れ様!」
「ありがとう」
ただいまともう一度繰り返してなまえの頬にキスをした。目を丸くして、すぐに顔を真っ赤にしたなまえが首筋に顔を埋めてくるのがなんとも可愛らしくて強く抱きしめる。すると、いつもなら「痛い、離れて」と言うだけで終わるなまえが、私の背中に手をまわしてきてぎゅうぎゅうと抱きしめてくれた。

「!」
なまえが自分からこんなことをしてくるのが珍しくて一瞬どきりとする。先程の外での態度とまるで正反対、しかし嫌な気はしない、なんて。

「…なまえ、すまないがサガを待たせている。一度教皇宮に行かなければ」
「せっかく帰ってきたのに、もう…?」
「…すぐに戻る」

そう言えばなまえは分かったと言ったがその表情がとてもしょんぼりとしたもので言葉に詰まる。なまえがこんな顔をするのは実に珍しいことでつい甘やかしたくなが、サガも待っている。やはり先に行っていてもらうべきだった。
そう考えながらも、待たせるわけにもいかず頭を撫でて立ち去ろうとしたときなまえが眉を下げて笑いながら頑張ってねと言った。それに耐えきれず頬にキスをすれば、なまえも顔を赤くしながら笑って私の頬にキスを返してきた。

「…!!!」

…なまえから、私に、なまえから私にキスを!!

「…なまえッ!!」
「うわっ、ちょ、ちょっとロス!!苦しい苦しいっ!」
叫ぶ彼女をひとしきり抱きしめた後に、そっと離れる。

「すぐ戻る」
「うん、待っている」

そう言って早く戻るためにそこから駆け出して宮の外に飛び出した。それを見たサガが呆れた顔で落ち着きがないと言ったのを聞きながらそのまま走る。

「早く行くぞ!」
「何をそんなに急いでいるのだ」
「なまえが待っている!」
「なに?」

理解できないと言った顔で走る私を追いかけてきたサガが首を傾げた。
「聞け、サガ。なまえが私にキスをしてくれた!しかもハグまでだぞ、どうしてだか分かるか?いいや、分からない、だが二人の時はいつもそうなんだ。どうしてだか分からないが…、それでも私は二人の時間を大事にしたい」
「…それはツンデ…いや、なんでもない」
「なんだ?サガは何か知っているのか」

教えてくれと立ち止まった私を面倒くさそうに見たサガに掴みかかる。「何をする!離せ、アイオロス!!」「いいやお前が白状するまで離さないぞ!」掴みかかったままそう言えば、しばらく取っ組み合いになったがやがてキリがないと判断したのかサガはため息を吐いて言った。

「アイオロス…、私から言えるのは一つだけだ」
そうして目を伏せたサガがふっと笑みを浮かべて言った。


「末永く爆発しろ」



(…なんだそれ?)
(いいから爆発しろ)

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