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いつも通りの穏やかな天気の午後、ヒュプノスと二人でまったりとお茶を飲みながらチェスを楽しむ。

やっぱりヒュプノスは強いと考えながら次の一手を模索しているところに、タナトスが静寂を切り開くようにばたばたと騒がしく駆け込んできた。

「見つけたぞ、なまえ!今日こそ俺の胸に飛び込んで来い!!」
「ていっ」

飛び込んで来いと言いながら、腕を広げて飛び掛かってきたタナトスの足を蹴って転ばせる。

私の正面でぼーっとして私の一手を待っていたヒュプノスが「見事」と言って倒れこんだタナトスを見下ろした。
がばりと上半身を起き上がらせたタナトスが私を見た。

「何をする、なまえ!」
「やめて、寄らないで、貴方が抱き着いてくると苦しいし重いの」
「それは全てこの俺の愛を示す道具にすぎん。…お前は殴り愛か?いつもいつもポコポコと殴ってくるではないか。なるほど、それならば何故もっと早く言わん?大丈夫だ、受け止める用意はできているぞ」
「よく分からないけれど、貴方の頭に蛆か何かが湧いているのは分かったわ」

そう言って立ち上がる。
この男は神様のくせにうるさい。それからはっきり言って周りでぎゃあぎゃあとやられるのは迷惑だ。がばりと起き上がってこちらを見たタナトスと目が合う。適当にチェスの駒を進めて少しだけ後ろに下がった。

「なまえ、何故逃げる」
「距離を測っているの」
「なるほど、俺の胸に飛び込むためにか」
「違うからね」
「ならば遠慮はいらん。それともお前、そうやって逃げるふりをして追いかけてもらうのが趣味か」
「いやいや違うから」
「ふん…、そうならそうと早く言え。そうすればもっと早くどこまでも追いかけ捕えてやったものを…。だが過ぎた時間のことを騒いだところで何にもならん。故になまえ、安心するがいい、今からお前を抱擁しにそこへ行くぞ」
「ねえ本当貴方の頭のなかどうなっているの…」

ため息をついて顔をあげた。一歩、二歩とステップを踏んで、こちらに駆けよってくるタナトスとの距離を測る。
うん、たぶん完璧。
さあ、それでは行こうじゃないか!地面を蹴りあげ距離を一気につめて、

ほっぷすてっぷ、


きっく。


静かな楽園に打撃音が響いた。

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