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「…は?」
「だから、別れましょうって言ったのよ、デス」

意味が分からねえと吐き出した言葉は声にならなかった。ひゅうと喉に張り付いたかのように出てこないその言葉にイラつきながらコーヒーメーカーを弄るなまえを睨み付ける。
「別れる?」
「ええ」
「ふざけんな、お前が俺から離れられるわけがねえ」
「大した自信ね」

そう言って笑ったなまえが俺の頬に手を添えて顔を覗き込んでくる。その目が至って真剣で心臓がどくりと跳ねた気がした。意味が分からねえ、別れる?俺たちが?ふざけんな、そんなことがあるはずない。

「いつもいつも、待ち合わせに遅れるし」
「…しょうがねえだろ」
「一緒にいるのに他の女の子をナンパするし」
それは嫉妬する顔が見たいからだ。(そんなこと口が裂けても言わねえが)
「意地悪ばっかり言うし、私なんかより綺麗なお友達がいるし、ねえ、私じゃなくても良いでしょ?」

別れようよ、再度そう言ったなまえに頭の中が真っ白になった。

告白してきたのはこいつだ。受けたのはただの気まぐれ。そのうちほかの女たちのように別れるのだろうと思っていた、のに


どうして息が、つまる?


「っざけんな、別れるなんて許さねえ、認めねえ、絶対」
なまえの腕を引いてソファに押し倒す。ソファに散った長い黒髪を気にせずにじっとこちらを見上げるなまえと目が合う。かと思えばなまえがふいに、ぷすっと妙な声を漏らした。それに自分の顔が引きつるのを感じながらなまえを見下ろす。

「てめ…、」

この状況で、なまえは笑いを堪えるので必死というように唇を引き締めて震えていた。

が、目元が笑っている。
本当にふざけている!この状況で普通笑うか!?いや、笑わない。ということは答えは一つだ、

「おい、お前、まさか…」

引きつった顔で、なんとか絞り出した声に、なまえはもう耐えられないとばかりに爆笑してみせた。

「あっはっはははは…!!ご、ごめん…!冗談だったのに、デスが本気にするからっ、あははっ…!!」
「騙しやがったな!!」
「うん、ぶふっ」
「信じられねえ…!!」
「ごめんごめん、試すような真似してごめんね」

そう言って押し倒している俺の頭を抱いたなまえがくすくすと笑う。「でもさ、いつも私の前でナンパするのわざとでしょ」「…なんのことだよ」「デスがいっつも私を試すからたまには私も試そうと思ったの。からかってごめんなさいね」「ふざけんな、もうするなよ。こりごりだぜ」「うん、もうしない」

そう言ってくすくすと笑ったなまえが俺の額にキスする。

「大好きよ」
「…ったく、人をからかう悪い女にゃ仕置きが必要だよなあ?」
「ふふ、どうぞご自由に?」

そう言って悪戯っぽく笑ったなまえの口に噛み付くようにキスをした。



(今度はお前が窒息しちまえ、)

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